なぜ日本のITエンジニアは輝けないのか? 憧れ、マーケット、そして待遇
海外の優秀なエンジニア人材が、日本に集まらない
「先端IT人材は今も足りないが、これからもっと足りなくなる」。そう課題提起したのは、マネックス証券やライフネット生命、マネーフォワードなどフィンテック分野の様々な新興企業の創業に関わってきた投資家の谷家衛さん。ブロックチェーン技術の実用化推進やエンジニアの支援を目的としたメディアの運営、データ分析やコンサルティング、ベンチャー企業支援などを行う企業「LONGHASH」の会長に就任した際に、会社設立記者会見でプレゼンテーションを行いました。 谷家さんは、日本のIT業界にとってこれから大事なのは、海外にいる優秀なエンジニアに日本に来てもらうことだと言います。確かに、米国のシリコンバレーを例にとると、日本を含む海外から優秀な人材が集まり、そこで起業してイノベーションを生み出し、そこに注目した投資家が資金を提供し、事業の支援を行うことでグローバル企業へと成長するという“成功の方程式”が確立しています。 また、海外の優れた人材に刺激されることで国内の人材成長も促進することができる点や起業したエンジニアを成長の目標にできる点も大きなポイントです。「シリコンバレーで起業する人の半数は海外出身者。そういうところに比べて、日本は現状で面白いもの(=イノベーション)を生み出していくのは簡単なことではないのではないか」(谷家さん)。
日本と海外、その違いは背後にあるマーケットの規模
シリコンバレーと同じようなことが、日本ではなぜ難しいのでしょうか。確かに、言葉の壁や生活環境の違いなどがその理由に挙げられますが、谷家さんの説明からは、そもそも“日本でビジネスすること”の魅力の薄さが要因ではないかということがわかってきます。 「米国には、その背後に巨大なグローバルマーケットが待っている。米国で起業すればお金も集まるし、世界のマーケットで勝負できるという環境が整っている。また、中国も国内だけで巨大なマーケットを形成しており、お金も集まる。中国も過渡期ではあるが、海外から多くの優秀な人材と資金を集める環境ができつつある」(谷家さん)。 Google、Apple、Facebook、Amazonに代表される米国のIT企業は、既に世界シェアを支配するグローバル企業へと成長し、シリコンバレーで起業することは、グローバルに事業展開することとイコールです。 また、中国ではスマートフォン大手のファーウェイやパソコンメーカー大手のレノボがグローバル戦略を推進していますが、アリババやテンセントなど同国内で莫大な数のユーザーを抱える巨大企業が成長しており、内需だけで大きなビジネスチャンスを秘めていると考えられます。 内需の縮小に苦しみ、海外展開にも苦戦する日本のビジネス環境は、こうしたグローバル経済の動きと比較すると厳しい状況に置かれていると言わざるを得ない状況であり、ITエンジニアにとってもチャレンジングな環境とは言えないのではないでしょうか。 谷家さんは、現在日本で大きな盛り上がりを見せている仮想通貨とその基幹技術であるブロックチェーン技術の分野が、日本が世界をリードする数少ないチャンスだと提言しています。「仮想通貨やブロックチェーンの分野は国によって様々な考え方があり、国によっては禁止しているところもある。その中、日本では仮想通貨やブロックチェーンのルールやビジネス環境を整備していこうという動きがある。これは日本にとって世界の優秀な人材を集める数少ないチャンスではないか」(谷家さん)。