なぜ日本のITエンジニアは輝けないのか? 憧れ、マーケット、そして待遇
スマートフォンを通じて提供される様々なアプリやサービス、仮想通貨やモバイル決済などのフィンテック、カーシェアリングや民泊といったシェアリングエコノミーの新サービス、そして人工知能や自動運転技術の利活用。今日、私たちの生活は、テクノロジーと密接に関係していて、もはや切り離せません。しかし、そのテクノロジーを駆使して様々なサービスを世に送り出す「ITエンジニア」を巡って、大きな課題があるのをご存知でしょうか。
日本では“憧れの職業”ではないというITエンジニアの現実
IT技術の発展は、様々な新たな職業を社会に生み出してきました。YouTubeの人気拡大にあわせて登場した「ユーチューバー」やSNSを駆使して世の中にトレンドを発信する「インスタグラマー」などはその特徴的なものです。特にユーチューバーの人気は高く、小学生がなりたい職業の上位にランクインするほど。テクノロジーの発展は、世の中の人たちに新たな憧れを生み出してきました。 しかし、残念ながらITエンジニアが憧れの職業であるという話は、あまり聞きません。むしろ、人気のない職業のひとつと言っても過言ではないでしょう。経済産業省が2016年にまとめた「IT人材に関する各国比較調査結果報告書」によると、IT産業への就職に対する興味関心について「この仕事は人気がある(就きたい人が多い)」と答えた割合は34.2%。インド(85.4%)、米国(82.8%)、中国(67.8%)に対して大きな差が生まれています。つまり、日本ではITエンジニアになりたいという人が他国と比較して圧倒的に少ないのです。 こうした状況は、日本の企業社会にIT人材不足という大きな問題を生み出しています。経産省の試算によると、人工知能やフィンテックなど新たなテクノロジーを研究開発する先端IT人材は2020年には4.8万人が不足すると言われており、またテクノロジーの発展にとってなくてはならない情報セキュリティの研究開発に携わる人材も2020年には19.3万人が不足すると言われています。新たなサービスやテクノロジーを生み出す担い手が足りなくなることで、今後グローバル経済の中で日本企業が技術開発分野において遅れていくことが懸念されるのです。