井之脇 海×上川周作「ちょっと泥臭いような、カッコ悪い大人が一番カッコいい」
上川 ホントにそうですね。僕も、自分をカッコよく見せたいという気持ちがどこかにあると、あとで振り返った時に嘘をついているような気分になってしまう。そうじゃないありのままの自分をさらけ出して、稽古で一緒に作り上げていきたいです。それと個人的には、海くんが何で笑うのか、笑いのツボみたいなところを知っていきたいです。
何かにチャレンジしてもがき続けているような大人が一番カッコいい
── 稽古に向けて、今していることがあれば教えてください。 井之脇 今はまず、基本的な体力作りを各々頑張っています。連絡を取り合いながら、「今日はスクワットめっちゃしました!」「僕は腕立てしましたー」みたいな(笑)。 上川 1つの目標に向かって一緒に歩んでいるという気持ちがすごく心強いですし、ありがたいです。稽古はまだでも「もう始まっているな」と思えるので。 ── Wキャストで上演されることについては、何か思うところがあるでしょうか(別チームの組み合わせは、窪塚愛流さんと篠原悠伸さん)。 上川 まったく同じものができることは絶対にないと思っているので、同じ戯曲だけど違う作品になるんじゃないかな。あまり意識はしていなかったけれど、稽古場ですれ違ったりしたら、覗きたくはなりますよね。 井之脇 仮にどこかでお互いの芝居を見るタイミングがあれば、その時に、「ああ、こういう解釈もあったんだ!」というふうに新鮮に思いたいし、向こうのお二人にもそう思わせたいですね。上川さんの言うように、絶対に違うものができると思うので。 それは「良い・悪い」ではなく、僕らは僕らにしか見つけられないものを日々探して、出会って、作っていきたいと思っています。
── 最後に、お二人が思う“カッコいい大人像”について伺えますか? 井之脇 なんと言いますか……僕は、カッコ悪い大人が一番カッコいい気がします。カッコ悪いというのはだらしないという意味ではなくて、たとえ失敗しても、生涯、何かにチャレンジしてもがき続けているという意味で。ちょっと泥臭い人ほどカッコいいんじゃないかなと思います。僕も、死ぬまで何かにトライして生きていけたらいいなと思うので。 上川 僕もまったく同感です。小さい頃はクールなヒーローに憧れて、戦隊物でいえばブルーになりたくて。実際に思春期の一時期、自分をクールに見せようと頑張ったこともあります。でもやっぱり無理で(笑)、そんなふうに自分を追い込んでも楽しく生きられないと気づいたんです。 大人になって、事務所の先輩の皆川猿時さんと舞台でよくご一緒するなかで、「稽古場でできないことは本番で出来ない」という信念のもと、皆川さんが稽古にすべてをぶつけ、がむしゃらに取り組む姿を見て、心の底から「カッコいいな」と感じたんです。僕もそんなふうに、「できないかも」と思う前に勇気を持ってチャレンジし続ける自分でいたいなと思います。