子どもと接する仕事に「性犯罪歴を確認」する是非 小児性愛型の同種再犯率は5年間で5.9%
その他の学童クラブや学習塾などの民間事業所は、「認定制度」となり、一定の条件をクリアし、認定を受けた事業所のみがDBSによる前科の確認を行うことになる。認定を受けない事業所もあるだろうし、個人事業主として家庭教師やベビーシッターを行う者もいるだろう。 一方、いたずらに業種を拡大しすぎると、憲法で保障された職業選択の自由を脅かすことにつながるし、前歴のある人から就労の機会を奪うことになる。 性犯罪者に限らないが、犯罪者が更生し社会復帰するうえで一番重要なことは、就労であり、それによって社会的な関係を再構築することだ。これが犯罪抑止に及ぼす効果は非常に大きい。
就労によって経済的余裕ができ生活が安定すると、人と人とのつながり、すなわち社会的関係ができる。そして自信や自尊心が育まれ、何かにコミットして忙しい時間ができることなど、そのメリットは大きい。逆にこれらがないと、再犯のリスクが格段に拡大する。 DBSによって犯罪防止のために就業へのハードルを高くしてしまうと、それは逆に再犯リスクを高めてしまうことにつながるのだ。 ■性犯罪の前歴チェックに課題 第2に、「性犯罪の前歴」をどのように定義するか、そしていつまで前歴をチェックするのかという問題だ。
法案では、拘禁刑のほか、罰金や執行猶予まで含むとされており、不起訴になったケースまでは含まれない。たとえば、被害者との間で示談が成立し、犯罪事実はあったとしてもそれが軽微で、被害者が寛恕の心を示しているのであれば、不起訴となることはめずらしくない。 あるいは、いったん嫌疑がかかったとしても、証拠が不十分であったり、犯罪事実がないことがわかって不起訴となったりするケースもある。この場合、冤罪のケースも含まれるだろうから、不起訴になった場合にまで対象を広げることは不可能だろう。
犯歴が照会される期間については、法案では拘禁刑が20年、執行猶予と罰金は10年間とされている。これに対し、「20年や10年では短すぎる。一生、子どもに近づく仕事には就けないようにしてほしい」という意見も根強い。 一方、刑法では、刑の執行を終えてから罰金以上の刑に処せられることなく10年が過ぎれば、刑が消滅する(前科がなくなる)ことが定められている。20年間の長きにわたって犯歴が照会されるというのは、通常の犯罪ではありえないことで、人権上の問題が指摘されている。