「イライラする」「気分が落ち込む」《不機嫌》をもたらす原因とは?自律神経の専門医が教える、上機嫌で過ごすためのヒント
なんとなく気分が晴れない、些細なことに苛立つ……。そんな「不機嫌」をもたらす原因や、上機嫌で過ごすためのヒントを、自律神経の名医が教えます(構成=島田ゆかり イラスト=すぎやままり) 【図】自律神経のバランス・4つのパターン * * * * * * * ◆年齢とともにスイッチの切り替えが鈍くなる 私は日頃、診察でさまざまな患者さんと接していますが、「若い頃よりもイライラしやすくなった」「気分が落ち込みやすい」と訴える60代以降の方は少なくありません。ご自身の体調が万全でなかったり、大切な人を見送る機会が増えたり、この先の生活に不安を感じたりなど、心配事が増える年代ですので、それも当然なのでしょう。 加えて、ここ数年続いたコロナ禍は人々の精神面に大きな影響を及ぼしました。自粛によるストレスや運動不足、コミュニケーションの減少などがきっかけで、フレイル(心身虚弱)状態の人が急増したのです。 それだけでなく、気分が晴れないとやる気も出ず、うつや認知症のリスクも高まる、という悪循環が起きます。ですから、シニア世代にとって「自分で自分の機嫌をとる」ことは、非常に重要なのです。 こうしたイライラや落ち込みの原因は、社会の状況や自分を取り巻く環境などの外的要因ばかりではありません。実は「自律神経」も影響しています。 自律神経とは、呼吸や血液循環、消化などの生命維持機能を自動的に調節する神経のこと。活動時に優位になる「交感神経」と、休息時に優位になる「副交感神経」が交互に働くことで体を調整しています。 両者がバランスよく働いている状態が心身のベストコンディション。ところが、年齢とともにスイッチの切り替えが鈍くなり、神経自体も老化して、バランスを崩してしまうのです。
では、自律神経が乱れると、気分にどう影響するのでしょうか。上の図を見てください。これは「自律神経のバランス」を示したものです。縦の矢印は交感神経、横の矢印は副交感神経を示し、上(右)に行くほど強く働いていることを示します。理想的なバランスは右上。交感神経も副交感神経もしっかり働き、内臓の機能も良好。心身ともにベストな状態です。 それ以外の3つは、バランスが悪いことを示します。左上はイライラや緊張・不安により交感神経が過剰になっている状態。血管がギュッと収縮し、血圧が上がりやすい。日本人に多いタイプです。 右下は副交感神経が過剰で、活動するのがしんどい、体がだるいと感じます。アレルギーを誘発しやすい状態です。左下が最も危険で、交感神経も副交感神経もレベルが低いため、呼吸が浅く、血流や消化も悪いという状態。ほぼ無気力になってしまいます。「ご機嫌」でいるためには、右上の状態を目指す必要があるのです。 自律神経を語るうえで欠かせないのが腸との関係です。両者は相互に関連しており、腸内環境の悪化は自律神経を乱す大きな原因に。逆に腸内環境が整うと副交感神経の働きがよくなり、自律神経のバランスが整うといわれています。 また、「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンの多くは腸で作られるため、腸内環境が乱れてその分泌量が減ってしまうと幸福感を感じにくくなるのです。つまり「ご機嫌」でいるために腸のケアは欠かせないということです。
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