障がい者の“母”、緊急搬送されるも「子どもの介護をしないといけないから、手術を受けるわけには」…知られざる「障がい者支援の実情」
なぜ、施設入所が難しいのか?
日本は、18歳からを「障害者」と位置づけています(18歳未満は「障害児」)。在宅であれば、65歳になると障がい福祉サービスから介護保険に移行しますが、施設入所者の場合は、65歳になっても引き続き障がい福祉サービスを利用することが可能になります。そのため、障がい者支援施設での生活がどうしても長くなり、中には50年間も施設で過ごすもいます。 施設のお部屋が空くのは、「死亡」「地域移行」「医療処置が必要になり、他の施設に移行」する場合です。もとから枠が少ないうえに、1人あたりの入所生活も長く継続するとなると、調整が難航するのも想像に難くないでしょう。
障がい者本人や家族が抱える「障がい受容」というハードルも
現場で抱えていた問題として、身体障がい者手帳、療育手帳、精神保健福祉手帳の取得を嫌がる方も中にはおられます。両親が高齢で介護が難しい状況になっても、身体障がい者手帳の取得に至らず障がい福祉サービスを受給することができない方もいました。 その理由として「子どもや自分が障がい認定をされるのが嫌だ」と本人やご家族の心の中に葛藤があり、障がいを受容できていないケースもあります。 この場合には、何度も何度も話に耳を傾ける必要があります。 障がいを背負うと、「すぐに受け入れることが可能か」といえば答えは「NO」です。理由として、人は、障がいを受け入れることができるまでには、数年以上のかかることも多いです。 人の受容過程においては、上田敏先生の第1段階がショック期、第2段階が否認期(「怒り・うらみ」と「悲嘆・抑うつ」)、第3段階が混乱期、第4段階が解決への努力期、第5段階が受容期があります。 この過程は、筆者自身も経験しています。私は16歳で交通事故に遭い、車いす生活になりました。受容過程では様々な感情が湧きおこりました。それまで16歳で車いす生活になるとは考えたこともなく、自分自身の障がいを受け入れることはできませんでした。受け入れるまでに5年もの期間を要しました。 障がい受容を行えたとしても、16歳までの自分自身の面影は残っているので、車いすではない自分が夢に出てきたりしたときには、落ち込むこともありました。