【特集 比べるワゴン─ジャーマンプレミアム編 ③】クーペライクなのはルックスだけじゃない「ハイパフォーマンス ワゴン」の世界
セグメントは異なるものの、好敵手であることは確かだ
メルセデスAMG CLA45 S 4MATIC+ シューティングブレーク(以下、CLA45 S)とアウディ RS4 アバント(以下、RS4)の直接対決なんて、ひと昔前だったら思いつかなかった企画だろう。 なにしろ、CLA45 Sはエンジンを横置きしたCセグメントなのに対し、RS4はエンジン縦置きのDセグメントと、本来属しているクラスが大きく異なっているからだ。 けれども、最近はセグメント分け自体があいまいになってきて、CLA45 SとRS4の場合も全長の違いは8.5cmに過ぎない。エンジンの最高出力にしてもRS4の450ps に対してCLA45 Sは421ps と、十分に比肩しうる範囲内。 駆動方式はどちらも4WDだが、本来、後輪駆動主体のメルセデス(AMG)が横置きで、どちらかといえば前輪駆動主体のアウディが縦置きという「逆転現象」が起きているのも興味深いところ。さらにいえば、実際に乗り比べても好敵手という印象だったし、本来であれば格下(失礼!)のCLA45 Sがずいぶんと健闘したことも事実である。 そんな話を始める前に、本特集のテーマであるドイツワゴンについて、私の思うところを少し記しておきたい。皆さんご存知のとおり、ドイツ車といえば質実剛健な作りが魅力的だが、同じ価値観はステーションワゴンにも貫かれている。 スタイリングよりも機能性、実用性を重視し、やや武骨ともいえるデザインのボディにたっぷりとした容量のラゲッジスペースを確保。しかも、セダン譲りの安心感溢れる走りを実現しているというのが、私自身が抱く「ドイツワゴン像」である。
どちらも「スタイリングと機能性の両立」に注意深く取り組んでいる
そうしたもともとの出自を考えると、CLA45 SもRS4もスタイル優先の「クーペライクなワゴン」と位置づけられていると言えなくもない。 とりわけCLA45 Sは「シューティングブレーク」と銘打ってスタイリング重視のワゴンであることをはっきりと打ち出しているし、アウディがいうところのアバントには「スタイリッシュなワゴン」という意味が明確に込められている。 一方で、どちらも「スタイリングと機能性の両立」に注意深く取り組んでいる点は特筆すべきだろう。 たとえばボディサイドを見たとき、CLA45 Sはルーフがなだからに下降するクーペライクなスタイリングに仕上げられているように思えるけれど、実際に下降しているのはウインドウグラフィックスだけで、ルーフそのものはある程度の高さを保ちながらテールゲートまで伸びきっている。 このため、後席のヘッドルームは日本人男性の平均身長を少し超える私が着座した状態で拳ひとつ半と、Cセグメントのハッチバックを大きく凌ぐ広さを実現している。 スタイリッシュなスタイリングと室内スペースの確保に関して優れた評価を確立しているRS4も後席ヘッドルームは拳ひとつ分と、こちらも十分な広さ。荷室容量にしても、CLA45 S:505L、RS4:495Lとワゴンの名に恥じないスペースを確保している(いずれも後席シートバックを立てた5名乗車仕様での状態)。 ヘッドルーム、荷室容量ともにCLA45 SがRS4を微妙に上回っているのは、前者がスペース効率の点で有利なエンジン横置きレイアウトを採用しているからだろう。 いずれにせよ、2台とも「デザイン上の格好良さ」が実用性を損なっていないわけで、その点でもドイツワゴンの良き伝統は受け継がれているというべきだ。