「国防教育法」が施行され、中国の学校は早くも「戦時体制」
中国政府は国際戦争への警戒を強める
中国全国人民代表大会常務委員会第9回会議で、「国防教育法」修訂草案の2回目の審議が行われ、9月21日に施行された。中国の学校は9月入学、7月卒業だが、改正「国防教育法」に合わせて、いま全国の学校で着々と軍事教育が行われている――。 孫文の歴史的演説から100周年…トランプ新時代に高まる「大アジア主義」の再評価 「国防教育法」は、今春2月、国務院教育行政部門と中央軍事委員会が共同制定した「学生軍事訓練大綱」により、全国の地方行政機関や社会階層、教員、施設などが一致して学生の軍事訓練に取り組むことが規定されたのに続く第2弾だ。 さらに一歩進めて、全国各地に駐屯する人民解放軍が、管轄地域にある小学校から大学まで、愛国主義教育を徹底し、軍事訓練を強化し、学生の国防意識を高め、兵役が光栄なことだと考える雰囲気作りを目指すと規定されている。 早い話が、「国防教育法」の目的とは、小学校から大学まで愛国主義教育を徹底し、将来の戦争に備える新世代を育成することである。小学校では愛国主義教育を行い、中学校では軍事基礎知識を学び、高校と大学では軍事訓練が実施されて、射撃訓練などの演習も行われる。 目下、中国では「反スパイ法」や外国投資に対する法制度が次々に制定されているが、今回の「国防教育法」は、中国政府が国際戦争への警戒感を強めていることを裏付けるもので、必要とあれば、即座に学生を兵士に仕立てあげるための準備ではないかとみられている。
中国の大学で起きている「逆転現象」
その一方、中国社会では、大学院生が大学生の数を上回るという「逆転現象」が起きている。今春、中国では1200万人近い大学生が卒業したが、経済不況で就職は困難を極め、低賃金労働に甘んじる者も少なくない。また、就職難から逃れるために卒業を先延ばしして、大学院へ進もうとする学生が増えた。その結果、大学院生が急増し、大学生の数より多くなってしまったのだ。 フランスの国際ラジオ放送(RFI、9月24日付)によれば、北京の名門大学である清華大学では、昨年末の時点で、大学院への入学者数が1万人余りなのに対して、大学の入学者数は約3800人弱で、大学院生のほうが3倍近く多くなった。上海の名門校の复旦大学でも同様に、昨年10月には、大学院生約3万7000人に対して、大学生は1万5000人余りと、ほぼ2倍に達した。その他の一流大学でも、大学院生と大学生の比率が軒並み1対1の比率に達し、大学院生が年々増加している。こうした「逆転現象」は、経済成長が鈍化し始めた10年前から起こり、経済不況が長引くにつれてますます顕著になり、今では大きな社会問題になっている。 ところが、そうした事態をものともせず、一部の大学ではむしろ積極的に大学院入学を奨励しているのである。 上海に本部を置く澎湃新闻によれば、浙江省台州市のシンクタンクである台州学院マルクス主義学院では、昨年、思想政治教育専科の大学院生募集を大々的に行い、「新時代の優れた教育者」を要請することに力を注いでいるという。 遼寧省の瀋陽工程学院电力学院でも、大学院生募集を積極的に行い、学歴向上と専門性の向上を謳っている。山東省の教員養成大学である泰山学院では、「2025年度大学卒業生のための大学院入学工作専門会議」を開催し、「思想統一と宣伝工作の強化」を目的として、大学院生を積極的に募っている。