急病で高い治療費がかかったら…「もしも」のときに助かる高額療養費制度 検討進む、自己負担の上限「引き上げ」 横川楓
実際に患者自身で負担しなければならない上限額は、所得などに応じて決まります。 現状では、たとえば医療費が月100万円かかった場合の自己負担額は、年収約370万~約770万円で約8万7000円、年収1160万円以上では約25万4000円。 そして70歳未満で住民税の非課税者の場合は3万5400円、年収約370万円以下の場合は5万7600円で済みます。 今回取り上げたニュースは、この限度額の引き上げに関するもので、70歳未満の年収約370万~約770万円の場合での基準額(現行で8万100円)を約8000円引き上げるとしています。 理由としては、高齢化が進んでいることや医療の高度化などにともなって高額療養費が増えており、保険料を払っている現役世代の負担を軽くするために患者自身に多く払ってもらおうというものです。 しかし、自己負担分を超えたお金が後から戻ってくるとはいえ、一時的には大きな支払いが……。 ■窓口での支払いを減らす方法は 急な入院となったときに、たとえいったんでも金銭的に大きな負担がかかるのは、かなりの痛手なはず。ですが、窓口での医療費の支払いを、自己負担額までにする方法があるんです。 一つ目が、マイナ保険証を利用する方法。マイナ保険証を病院に提示する際に「限度額情報の表示」に同意をすることで、1カ月分の支払いが自己負担限度額までとなります。 もう一つが、入院などをする前に健康保険組合に申請して交付された「限度額適用認定証」を病院に提示することでも、窓口での負担を限度額までとすることができるのです。 万が一のときに高額な医療費を用意せずに済むようになるので、マイナ保険証の登録手続きをしておくメリットの一つと言えそうです。 一方、限度額適用認定証については事前の申請が必要です。自分自身でできない場合は、代理人に申請してもらうことも可能です。 また、高額療養費については、1年間で支給を受けた月が3カ月以上となった場合、4カ月目からは「多数該当」という区分になり、自己負担の限度額が軽減されます。急な病気のように避けられない、しかも大きな出費があるときの保障があるというのは、うれしいことですよね。 ですが、年末年始は開いている病院も少なくなります。病気や怪我には気をつけて過ごしましょう。 (横川楓) 横川楓(よこかわ・かえで)/1990年生まれ。経営学修士(MBA)、ファイナンシャルプランナー(AFP)などを取得し、「やさしいお金の専門家/金融・経済アナリスト」として活動。一般社団法人日本金融教育推進協会代表理事。「誰よりも等身大の目線でわかりやすく」をモットーにお金の知識を啓発、金融教育の普及に取り組んでいる。著書に『ミレニアル世代のお金のリアル』(フォレスト出版)、『お金の不安と真剣に向き合ったら人生のモヤモヤがはれました!』(オーバーラップ)。
横川楓