FC町田ゼルビア、異質に映る2つの「行為」を巡るジャッジの是非。水かけ、ロングスロー問題に求められる着地点
「タオル」とロングスロー問題に求められる着地点
黒田監督が言及したロングスローに関する審判委員会の見解も、11日のレフェリーブリーフィングにおける質疑応答で問われている。質問で取り上げられたのは、8月31日に東京・国立競技場で行われた、町田のホーム扱いとなる浦和レッズ戦の前半に見られた光景だ。 町田は戦術の一つにすえているロングスローにおいて、ボールが滑らないために、投げる前にスロワーが表面を拭くためのタオルを複数箇所にあらかじめ置いている。浦和戦は台風10号の影響で雨が降っていたため、ビニール袋に入れたうえでタッチライン際に置いていた。 しかし、開始10分に浦和のベンチ前で獲得した2度目のスローイン。森保ジャパンに初招集されたばかりのDF望月ヘンリー海輝がボールを持ち、ビニール袋からタオルを取り出して拭こうとした直後に、浦和ベンチから脱兎のごとく飛び出してきたコーチングスタッフがいた。 望月の眼前でビニール袋ごとタオルを奪い取ったのは、浦和のヴォイテク・イグナチュク フィジカルコーチ。その後も同じような行為を繰り返し、あるときには自らタオルを取り出しては雨で濡れた自分の頭や顔を拭き、第4の審判員から注意を受ける場面も見られた。 前例のない場外戦を、望月は試合後に苦笑しながらこう振り返っている。 「自分がボールを拭こうとしたタオルを、ポイってやられちゃいました。近くにもう一個あったので、自分の感覚的には『まあ、いいかな』と。そういうこともあるんだな、みたいな感じした」 黒田監督が前任の青森山田高校時代から十八番としてきた、町田のロングスローに対しては、タオルで表面を拭く行為を含めて「時間を余計に浪費する」といった理由で、J2を制して悲願のJ1初昇格を決めた昨シーズンから幾度となく批判の対象になってきた。 もちろん、PKを蹴る前にボールへ水をかける行為を含めて、競技規則にはタオルで拭く行為も、ましてやロングスローそのものに対する是非はいっさい記載されていない。そうした状況を踏まえて、佐藤氏は浦和戦におけるタオルの件に関しては、両チームの配慮が必要だとする見解を示した。 「僕もその試合を見ていましたけど、自分(浦和)のチームの前に相手チームのものが置かれていた、という状況ですよね。そのあたりは基本的に、すべてレフェリーが間に入って何かをする、という形にはならない。対戦チームがあってのサッカーなので、そこはやはり両チームに配慮してほしいな、と。さらにわれわれが介入するよりは、ゲームをよりスムーズに進めていくうえでは、Jリーグと詰めていく話なのかな、と。置く場所などを含めてリーグと話をしながら、みんながそうだよね、と言える着地点を見つけながらやっていければいいのかなと思っています」