FC町田ゼルビア、異質に映る2つの「行為」を巡るジャッジの是非。水かけ、ロングスロー問題に求められる着地点
審判委員会の見解。「今後、同様の事象が起こった場合も…」
東京・千代田区のJFAハウス内で11日に行われた、JFAの審判委員会によるブリーフィング。映像をもとにJリーグの試合で起こった事象を振り返りながら、審判団とメディアとの間で共通理解を深める定期開催の場で、真っ先に取り上げられたのが町田対磐田の58分の場面だった。 高崎主審の判断を支持した理由を、佐藤氏は約25分もの時間をかけて説明している。 「競技規則には『これはしていい』とか、あるいは『これはダメ』と一つ一つ具体的に書かれているわけではありません。なので、審判員は競技規則の第1条から17条に書かれている内容や、競技規則の精神をベースに、安全かつ公平で、お互いにフェアで、対戦相手をリスペクトする試合を最後までやりましょう、といった精神のもとでジャッジをくだしていきます」 5月のヴェルディ戦や6月のガンバ戦をへて、JFAやJリーグのもとへは、藤尾のルーティンに対して「厳しく取り締まるべきだ」とする批判が届いていた。磐田戦で示された高崎主審の判断がそのまま流された2試合と違ったものでも、佐藤氏は許容範囲内だと位置づけた。 「ゲームをうまくコントロールしていくうえで、両チームに中立的な立場で目の前の事象を考えたときに、これは交換すべきだと高崎主審が考えた、ということ。この試合を任された彼が90分間を通して、責任をもってゲームをコントロールしたなかでの判断をもちろん支持します。今後に同様の事象が起こった場合も、審判員の裁量に任せます。現状では彼らがさまざまな葛藤を繰り返しながら、何がもっとも大事なのかを自分たちで考えてほしいので、伝えられるとすれば、競技規則とその精神に則って考え、どのようにゲームをマネジメントしていくのか、という点ですね」
黒田監督が指摘する問題点。「議論してくれてありがたい」
一夜明けた12日。町田市内のトレーニング場で非公開練習を終えた後に実施された囲み取材で、黒田監督にレフェリーブリーフィングで示された見解に対する受け止めを聞いた。 今シーズンの町田は藤尾以外にもFWエリキやMF下田北斗、DF鈴木準弥がPKキッカーを担い、このときは事前に水をかける行為なしで成功させている。藤尾のルーティンに対して、黒田監督は自身の指示ではないとしたうえで、まずはこう語っている。 「藤尾が考えたルーティンのなかで、一度成功すればもう一度という気持ちになるのは、絶対に負けたくない、必ず決めたいというプロサッカー選手としての気持ちの表れだと思っている。こちらとしては(ルーティンが)ダメとも、あるいはいいとも言ってはこなかった。しかし、藤尾本人も過去2度は何も言われていなかったなかで、3回目でいきなりボールを交換させられた一貫性のなさに対しては、やはり回答がほしい、と思った気持ちももちろんわかります」 そのうえで、海外を含めたほぼすべての試合で、キックオフ前やハーフタイムにピッチに散水する状況が日常茶飯事になっている状況を受けて、次のような持論を展開している。 「ボールの滑りをよくするために、またはポゼッションをしやすくするために芝生へ水をまくわけですよね。でも、これはどこでもやっているからと、決してとがめられているわけではない。なので、見慣れているか、見慣れていないかというだけの差だと思っています。私たちのロングスローを含めて、いままでの日本のサッカー界で見られなかった光景に対して、アレルギー反応のようなものを起こす感覚は、ある意味でしょうがないんでしょうけど。 ただ、日本サッカー協会の審判委員会でそういった件を、テーブルの上に乗せて議論してくれた件はありがたいと感じている。われわれはそれを意気に感じて、藤尾もさらに成長するために、ボールに水をかけなくても成功するだけのスキルというか、キックというものを身につけていく必要性もある。その意味でお互いに成長できるチャンスにできればいいと思っています」