FC町田ゼルビア、異質に映る2つの「行為」を巡るジャッジの是非。水かけ、ロングスロー問題に求められる着地点
「相手が嫌がるプレーをするのもサッカー」。首位戦線を走る軌跡に込めた自負
世界的にスピーディーな試合が求められている状況下で、時間を浪費する、とした批判の対象になっているロングスローそのものに対しても、佐藤氏はレフェリーの裁量に委ねる方針を掲げている。 J2だった町田が横浜F・マリノスを下剋上で撃破した昨年7月の天皇杯3回戦。町田のロングスロワーを務めていた選手が、投げるたびにタオルで表面を拭いていた行為に対して、後半に入って西村雄一主審が注意。それ以降はタオルで拭かずにロングスローを投じている。佐藤氏が言う。 「なぜ拭くのか、という理由はわれわれも理解している。戦術の違いもあるなかで、どこでレフェリーによるコントロールが効くのかといえば、特に時間における公平さとなる。全部ダメ、全部いい、というのではなく、それは時間帯によっても違うと思うし、得点差などによって受け取り方もいろいろと違ってくるなかで、レフェリーがどのようにして鼻を利かせながらコントロールしていくのか。そういった部分で、当時のレフェリーは介入したと思っています」 浦和戦で除去されたタオルに対して、黒田監督はちょっぴり不快感を示している。 「試合前のマッチコミッショナーミーティングで、人のものに手をかけるといった、反スポーツ的行為はやらないとみんなで、相手チームもレフェリーも含めて約束している。なのに、ああいった行為を見ると、根本的に約束が守られていない。そういう点がしっかりと守られれば、こちらとしてもタオルはもう1枚、2枚でいいわけですよね。ただ、今回の話を聞いて、置き方は工夫しなくちゃいけないと感じている。それを相手がすごく失礼だと感じていたのであれば、やめなきゃならない。クラブの運営側と、話し合いたいと思っています」 一方でロングスローに関しては、タオルで拭く行為を含めて、町田の戦術である以上は「やめてほしいと言われているわけでもなく、もう投じませんというわけにもいかない」とこう続ける。 「決して過剰過敏にならずに、しっかりと言われたこと、またはこうしてくださいって言われたことに対して速やかに対応していく、という解釈でいくしかないのかなと。夜露などでボールが濡れている以上は、タオルで拭かないわけにはいかないし、手も汗で濡れている。持ってもらったらわかるけど、ボールは重たいので。見慣れていないものに対して叩き続けるといった風習や傾向はちょっと違うなとは思いつつも、そういったなかでサッカー競技が展開されているのであれば、相手が嫌がるプレーをするのもサッカー。常に相手を気持ちよくさせるというか、相手が嫌だと思うプレーはやりませんと言うのであれば、それはもうサッカーじゃないでしょう」 残り9試合となったJ1リーグ戦で、町田は破竹の7連勝をマークしているサンフレッチェ広島に勝ち点55で並ばれ、得失点で後塵を拝する2位へ後退した。ただ、今月28日には敵地・エディオンピースウイング広島での直接対決も組まれている。まだまだ戦いは終わっていない。 審判委員会による見解で明確にノーを突きつけられなかったなかで、首位戦線を突っ走ってきたこれまでの軌跡にあらためて自負を込め、何を言われようとブレないメンタルを強く脈打たせながら、まずは敵地・ベスト電器スタジアムに乗り込む14日のアビスパ福岡戦に臨む。 <了>
文=藤江直人