ウマ辛で人気の担々麺、「本家の味」誕生の秘密 汁なし・伝説シェフのまかないも紹介
■夏は発汗を促し、冬は体が温まる万能食
三国志の蜀(しょく)の時代から、1年を通して湿度が高い四川省では香辛料を多用する食文化が発達した。夏は蒸し暑く、冬は寒さが厳しい。四川料理は暑い時期には発汗を促し、寒い時期には体を温めてくれる万能食なのである。 こうして四川飯店では初代からの味を守る一方、伝統の革新にも務めている。一例がランチタイムの「今月のおすすめ麺」。月替わりで創作麺が提供され、レシピ担当者は日頃から研究に余念がない。 9月の「鶏肉とキノコのチーズ入り香辣醤あんかけスープそば」は、チーズを使った珍しい一品。香辣醤(シャンラージャン、多数の香辛料をブレンドした豆板醤の一種)を利かせたスパイシーなあんかけスープの中からチーズが溶けて伸びる。見た目も楽しい「映え料理」だった。10月はほうれん草の麺を使用した「エビ・イカと色々野菜の豆乳スープそば ガーリック辣油と共に」である。 日本独自の発展を遂げ、いまなお進化を続ける担々麺。その原点を改めて振り返ってみた。元祖の味を舌にしっかり刻み込めば、さらに深く味わえるようになり、食べ歩きや食べ比べがもっと楽しくなるだろう。 文:畑中三応子(食文化研究家)
畑中三応子
東京生まれ。『シェフ・シリーズ』『暮しの設計』(中央公論社)編集長を歴任。近現代の食文化を研究・執筆。第3回「食生活ジャーナリスト大賞」受賞。著書に『ファッションフード、あります。』(ちくま文庫)、『熱狂と欲望のヘルシーフード』(ウェッジ)など。 ※この記事は「THE NIKKEI MAGAZINE」の記事を再構成して配信しています。