なぜユニクロの柳井氏は「ウイグル綿花問題」を語ったのか 中国で炎上しても、“あえて”発言した理由
規制は3年後、なぜ今発言したのか?
……という見解を述べると、柳井会長の「失言説」を支持する方たちからはこんなツッコミもあるかもしれない。 「いやいや、それは強引なこじつけだ。ウイグル綿花が本格的に規制されるのは3年後なんだし、ここまで急いで中国の不買をあおるようなことを言う必要はない。単なるミスだろ」 もちろん、柳井会長も人間なのでそういう可能性もなくはない。ただ、規制が3年後だから急ぐ必要がないというのはちょっと違う。現在、欧州市場で覇権を握っているライバルたちは、台頭著しいユニクロの評価を地に落としたい。そこで「ウイグル綿花問題」は格好の材料なのだ。 例えば、欧州市場で圧倒的なシェアを誇っているスウェーデン衣料品大手H&Mはいち早く、新疆ウイグル自治区産の綿花を製品に使わないと宣言している。そのおかげで欧州内では「人権侵害に加担している企業」と攻撃されることはなくなったが、その代償として中国政府主導の不買運動が起きて、客離れが進み閉店ラッシュが起きた。 そんな苦い経験をしているH&Mの立場になっていただきたい。これまで自分たちの独壇場だった欧州に、ユニクロがじわじわと迫ってきた。どうにかしてこの勢いを止めたいはずだ。 彼らからユニクロを見れば、新疆ウイグル自治区産の綿花についてはノーコメントを貫いてきたことで、中国の消費者と、欧州の消費者の双方に「いい顔」をしてきている。シンプルにムカつくはずだ。 どうにかしてこのいけすかない日本企業の快進撃を止めようと思った時、「新疆ウイグル自治区産の綿花」をボイコットしている欧州アパレルがとるであろう「攻撃」は一つしかあるまい。 欧州メディアに「最近人気のユニクロはどうやら人権侵害に加担しているらしい」と情報提供をして、ノーコメントを貫くユニクロを追及すれば、人権意識の高い欧州の消費者はそっぽを向く。ブランド価値も大きく毀損(きそん)するというシナリオだ。