“生きづらさ”抱え被害者意識が増幅、女性を「敵」と見なし攻撃する事態も…「弱者男性」が“闇落ち”せずに苦悩を訴える方法とは
異性との対立が「被害者意識」を強める悪循環
1970年代、女性の問題を取り上げるフェミニズム(女性学)に呼応する形で男性の問題を取り上げる「男性学」がアメリカで誕生し、日本でも80年代から男性学の書籍が刊行されるようになった。そして、近年では男性学の本が多数出版される傾向にあり、「男性学ルネサンス」とも表現できる状況が起こっている。 しかし、女性学に比べ男性学は自己否定の傾向が強く、男性たちを肯定する言葉が使われづらい、と杉田氏は指摘する。 また、メンズリブに対しても、「男性同士が集まりあうことは、女性や少数者の排除をもたらす『ホモソーシャル(男同士の絆)』の一種である」と非難される場合がある。 「差別やジェンダーに関わる学問では、問題を指摘する用語が量産され、マジョリティの一挙手一投足が批判の対象になる傾向があります。そのため、『用語を多く知っているほど道徳的に正しい』というエリート主義になりがちです」(杉田氏) 歴史的には、フェミニズム運動では女性たちが実際に集まって語り合うことで、自分たちを肯定する言葉と同時に人種的・性的少数者の問題を軽視していたことに関する自己批判の言葉も生み出されるなど、バランスが保たれる傾向にあった。 しかし、ネット上での男性と女性の対立が激しくなった現在では、本来なら自己批判のために生み出された言葉が、「敵」を批判するために用いられる事態になっている。 「言葉の背景にあった内実や自己批判の精神が忘れられ、相手を攻撃する目的で乱用されている側面があります」(杉田氏) 韓国では日本以上に男女の対立が激しく、被害者意識を強く抱いた女性たちが過激に男性を非難することで、男性たちによる反発が強まる悪循環が発生している。アメリカや日本でも、女性への攻撃を扇動するインフルエンサーに、被害者意識を抱いた男性たちが惹き付けられている事態が問題視されている。 「男性は自分の感情を抑圧しがちな傾向にあるからこそ、自身の傷付きやすさや弱さを自覚し、ケアすることは大切です。 しかし、傷付きやすさの自覚が『自分たちこそが被害者だ』という発想を招いて、女性たちに対する加害に転じてしまう危険もあります。そのような発想を招かないためにも、男性たちが自身を肯定できる『ポジティブな尊厳』を発見する必要があるのではないでしょうか」(杉田氏)