“生きづらさ”抱え被害者意識が増幅、女性を「敵」と見なし攻撃する事態も…「弱者男性」が“闇落ち”せずに苦悩を訴える方法とは
女性バッシングや「闇落ち」の危険性
杉田氏が指摘するのは、男性が持っている特権と受けている抑圧の関係や、男性たちが社会にもたらす加害と社会から受けている被害について、細かく論じることの重要性。 「男性たちに生じている問題について『生きづらい』という感情だけでまとめてしまうと、被害者意識が増幅し、『闇落ち』する危険性があるためです」(杉田氏) 現在では、「生きづらさ」を訴える市井の男性たちの多数がSNSに投稿している。しかし、SNSではインフルエンサーに先導されながら男性たち同士が集団としてまとまり、女性などを「敵」と見なして攻撃する事態が起こりやすい。 その結果、個々の男性たちが自分たちの抱えている「生きづらさ」を詳細に言語化して訴えることも困難になる。「敵」を攻撃する反動的な傾向に巻き込まれないようにしながらも、男性たちがアイデンティティを健全に形成する取り組みが必要であるという。
男性たちが語りあう「メンズリブ」
その一例が「メンズリブ」だ。日本では1990年代から行われており、「男らしさ」にとらわれず自分らしく生きることを目標にする運動である。国内では『ぼくらの非モテ研究会』 や『Re-Design For Men』 、『うちゅうリブ』 などの団体がある。 「メンズリブの団体や取り組みは、まだ数が足りていません。男性が自分たちの苦悩を語り合う場面は、もっと多くあったほうがよいです。 近年では、多くの男性が自己批判・自己否定の感情を抱えており、ネガティブな自己意識を抱いています。メンズリブには、ポジティブな自分らしさを取り戻す可能性があります。 また、多くの男性は、社会生活で生じる競争により疲弊しています。メンズリブは、普段の競争から保護される『シェルター』としても機能します。 一方、男性たちが集いあうことで、女性たちをバッシングしたり『自分たちのことを優遇しろ』と社会に要求したりする攻撃的な運動が形成される危険性もあります。大切なのは、女性や社会などの『他者』に左右されない、健全な自己愛を培うことではないでしょうか」(杉田氏)