国民・玉木氏をじわじわ追い詰める自民の戦略 対自民の「戦略」「党内ガバナンス」欠如に不安
確かに、小渕氏は旧茂木派幹部だが茂木氏とは距離があり、小林氏は高市早苗前経済安保相の“弟分”だ。さらに、総裁選で小林氏を担いだ福田達夫幹事長代行も再任したことで、「事実上の挙党態勢の陣容」(同)となったことは間違いない。 森山、宮沢両氏が秘かに画策した「壁」引き上げでの「対玉木戦略」は①まず、財務省にも根回しして低めの回答を提示し、国民民主の反応を見極める②財源不足を理由に最大限の譲歩案を示す③国民民主が納得せざるを得ない引き上げ額を提示する際は、国民民主に税源確保の責任をとらせるーーというのが骨格だったという。
確かに、その後の展開をみると、②が17日の決裂につながったのは間違いなく、最終決着の期限となる来年2月末に③を実行すれば、通常国会での石破政権崩壊は回避できる可能性が広がるとみられる。このため、事情を知る自民幹部からは「まさに『企画演出・森山、演技者・宮沢』という戦略通りに進んできたので、年明け以降への交渉延長も思惑通り」(自民執行部)との声も漏れてくる。 そこで、森山、宮沢両氏にとっての不安材料となるのが「国民民主のガバナンス欠如で2月末になっても交渉がまとまらず、来年度予算案の衆院通過が3月上旬以降にずれ込むリスクがある」(自民国対)ことだ。
ただ、予算成立の遅れで政府が暫定予算編成に追い込まれる事態となれば、能登関連予算の執行が遅れるだけでなく、給与引き上げも含めた国民経済への悪影響も避けられず、「衆院予算委を仕切る立憲民主の安住淳委員長の責任問題にもなるので、安住氏は暫定予算回避に動くはず」(自民国対)とも期待する。 ■石破首相の対応次第で「戦略崩壊」も このため、森山・宮沢両氏は「ぎりぎりまで暫定予算もやむなしとの態度を変えず、国民民主を追い詰める戦略を固めている」(同)とされる。ただ、「肝心の石破首相が国民世論を気にして、玉木氏との党首会談などを通じて変な妥協をすれば、戦略が破綻しかねない」(政治ジャーナリスト)ことも想定される。
さらに、巨額裏金事件での旧安倍派会計責任者の国会招致や証人喚問で与野党攻防が混乱すれば、「『壁』引き上げどころか、自民党内で石破首相の退陣論も出かねない」(同)こともあり、「2月中旬以降の対国民民主の交渉は、出たとこ勝負の“遭遇戦”になる」(同)ことは避けられそうもないのが実態だ。
泉 宏 :政治ジャーナリスト