「音楽を助けてください。次世代が危ない」亀田誠治さんの懸念と挑戦 文化を創る「新しい循環」目指す日比谷音楽祭
亀田さん 回を重ね、音楽祭として定着するなかで、「そろそろチケットを売って、お金もうけをしたらどうか」と関係者に言われることもあります。でも、当初から目的はお金もうけではない。多くの人々の気持ちを頼りにこれまでになかった音楽文化を創造しようというのが、日比谷音楽祭のエンジンであり理念です。これは全く変わりません。 ▽社会や文化を豊かにする循環 ―音楽の実験の場でもあるのですか? 亀田さん 日本の音楽業界で今、楽曲の制作費が削られる傾向にあります。特定の人気アーティストや大きな利益が見込める作品にお金が注がれがちです。さらに近年は、ミュージシャンがわざわざ合奏しなくても、コンピューターで簡単に安価にそれなりの音楽を作れるとされ、生演奏の達人たちが実際に共演しておもしろい音楽表現を生み出すチャンスを失ってきている。特に若いミュージシャン、次世代が危ない。「音楽を助けてください」との思いで日比谷音楽祭は開催しています。
―どうすれば助けられますか。 亀田さん アメリカのニューヨークで毎年夏に開かれる入場無料の音楽フェスティバル「サマーステージ」は、寄付金と協賛金で必要な費用が賄われています。こうした社会や文化を豊かにするためにみんながお金を投じて循環させていく助け合い、「互酬」の仕組みを、日本の音楽の中で率先して取り入れていけるのではないかと始めたのが、日比谷音楽祭です。 ―そうした〝音楽による実験〟に集う入場者とオンライン視聴者は昨年、全国で延べ26万人を超えました。 亀田さん ミュージシャンを応援し、心を豊かにする音楽を創造し、そうした文化をたくさんの人に届けるのが日比谷音楽祭の目標です。音楽の関係人口を1人でも増やしたい。1人の力は限られていても、実に多くの人が参加し、連帯してくださる。これほど多くの人生の中に届く音楽フェスティバルは、日本で他に類例がないくらいに大きく育っています。 ▽1人でも多く、音楽で心を潤して