「寝だめは悪」は時代遅れ!? “週末の寝だめ”で「心血管疾患」リスク低下 最新研究で判明
2024年8月30日~9月2日におこなわれた欧州心臓病学会議2024で「週末に最も多く睡眠時間を確保したグループは、最も睡眠時間が短かったグループと比べて、心血管疾患を発症するリスクが19%低くなった」という研究が報告されました。 【イラスト解説】「心不全」発症のリスクを上げやすい“食べ物” この内容について中路医師に伺いました。
欧州心臓病学会議2024で発表された内容とは?
編集部: 欧州心臓病学会議2024で発表された内容を教えてください。 中路先生: 今回紹介する研究報告は、欧州心臓病学会議2024で発表されたものです。ただし、査読を受けて学術誌に掲載される前の情報になります。研究グループは、UKバイオバンクに登録されている約9万1000人のデータを用いて、週末の睡眠と心疾患の関係を調べました。 週末にどれだけ余分な睡眠時間を取っているかで対象者をグループ分けしました。さらに、定期的な睡眠時間の調査を自己申告形式で調べると、約22%が一晩の睡眠時間が7時間未満という睡眠不足状態であることがわかりました。 研究グループが平均約14年間にわたって追跡調査した結果、週末に最も多く睡眠時間を確保したグループは、週末に最も睡眠時間が短かったグループと比べて、心疾患や脳卒中、心不全、心房細動などの心血管疾患を発症するリスクが19%低くなりました。 さらに、「日常的に睡眠不足であるものの、週末に寝だめをしている」と答えた人は、睡眠不足をほとんど補わなかった人と比べて、心疾患のリスクが20%低いという結果が出たとのことです。 今回の結果について、研究グループは「十分な寝だめは、心疾患リスクの低下と関連している。平日、定期的な睡眠不足になっている人ほど顕著に関連性がみられた」と述べています。
日本人の睡眠時間の実情は?
編集部: 今回の研究では睡眠時間が取り上げられていますが、日本人の睡眠時間の実情を教えてください。 中路先生: 睡眠時間については、推奨する睡眠時間や生活習慣を世代ごとに示した「健康づくりのための睡眠ガイド2023」を厚生労働省が出しています。 このガイドによると、成人に推奨する睡眠時間は6時間以上が目安、子どもについては小学生が9~12時間、中学生・高校生が8~10時間を目安にすることが推奨されています。 一方、高齢者については、寝床にいる時間が8時間以上にならないことを目安に、必要な睡眠時間を確保すべきことが示されています。 日本人の睡眠時間を諸外国と比べてみると、各国の平均睡眠時間は8時間28分である一方、日本人の平均睡眠時間は7時間22分と、各国平均よりも1時間以上短かったことが経済協力開発機構(OECD)による調査で判明しています。 また、調査対象33カ国の中で最も短いという結果も示されました。