「幸せの国」ブータンの国民食、トウガラシたっぷりのチーズ煮込み「エマダツィ」
南アジアに位置し、「世界一幸せな国」とも呼ばれるブータン。日本と同じく米が主食で、トウガラシやチーズを使った独自の食文化がある。ブータンの国民食ともいわれる「エマダツィ」の主役は、夏が旬の青トウガラシ。たっぷりとしたチーズで煮込んだシチューのような料理で、食べると夏バテも吹き飛びそうだ。 【写真】店内には幸福や健康を祈るブータンの祈禱旗「ルンタ」が飾られている 靖国神社や北の丸公園など、都心の名所からほど近い住宅街に、ブータン料理店、LASOLA(東京都千代田区)がある。 ヒマラヤ山脈の東端に位置し、国土の大部分を山岳地帯が占めるブータンで、トウガラシは料理に欠かせない「野菜」として食べられている。 「ブータンは世界一トウガラシを使う国で、エマダツィはまさに、トウガラシが主役の料理です」 そう語るのは、店主の村上光さん。ブータンの公用語、ゾンカ語でエマはトウガラシ、ダツィはチーズ。日本のみそ汁のように、日常の食卓に並ぶ国民食だという。 村上さんは平成23年から都内のブータン料理店でシェフとして働き始め、令和3年にLASOLAを開業した。それまでブータンについては何も知らなかったが、シェフ就任を機に行き来するようになった。 現地を訪れると、トウガラシを野菜として広く使う食文化を目の当たりにして衝撃を受けた。「市場では山のようにトウガラシが積まれ、市民が大量に買っていく。子供も大好きで、生のトウガラシに塩をかけておやつのように食べるんです」(村上さん) ブータンの主食は日本と同じく米で、赤米も食されている。エマダツィは、ご飯との相性が抜群。まさにブータンの「みそ汁」だ。 ■コクがありさっぱりと 村上さんが作るエマダツィも、そんな本場の味を踏襲する。器には、青トウガラシが9本ほど。スプーンですくい口に運ぶと、トウガラシの辛みが舌と喉を刺激し、思わずせき込んだ。が、チーズのスープは、コクがありながらさっぱりしていて、肉厚のトウガラシも食べ応えがある。お供のご飯で辛みを和らげ、スプーンが止まらなくなった。 エマダツィの作り方を教えてもらった。