iPhoneだけで映画を撮る! 三池崇史監督に『ミッドナイト』制作秘話を聞いた
後からフォーカスを変えられる「シネマティックモード」
── 技術的なところではiPhoneのどんな機能を使ったのでしょうか? 三池 フォーカスが後で選択できるので、標準カメラアプリの「シネマティックモード」は多用しました。当初はポイントで使おうと思っていたのですが、少し使ってみると調子が良かったので長いシーンをまるまる「シネマティックモード」で撮ったりもしましたね。人物から人物へのフォーカスのチェンジはすべてこのモードで行なっています。 ただ、このモードを使うには一定の光量が必要で、外ロケであれば問題ないんですけど、暗い場所やスタジオだと、中心になる被写体にちょっと強めにライトを当てたりと工夫はしました。とは言ってもフォーカスを変えた時のボケ感も光学レンズに非常に近い感じで不自然さがなく、うまく作られているのには驚きましたね。あんなに薄いレンズなのにどうして?って(笑)。 ── 今回の『ミッドナイト』はタクシードライバーが主人公でカーアクションも満載です。動きのある撮影ではいかがでしたか? 三池 iPhoneのスタビライザー(手ブレ補正)はもともと秀逸なのですが、「アクションモード」にすると手持ちで激しく走った時でも全然ブレないんです。それに僕らの感覚だと(ブレ補正を掛けると)画角がもっと狭まるだろうと思っていたんですけど、ちゃんとした画角で撮れる。僕らの工学的な理屈を超えていて面白いなって思いましたね。テクノロジーが我々に合わせてくれるというか、カメラの拡張性が高いなと。本当に進化が早いので、iPhone 16になったらどうなるんでしょうね。
── メイキング映像を拝見しましたが、グリーンバックのシーンもありました。こちらもiPhoneで撮影されたのでしょうか? 三池 バイクが回転するところとクルマの中でガスが出る冒頭のシーンの2カットですね。もちろん合成する背景の映像もちゃんとiPhoneで撮ってます(笑)。それと車内のシーンではiPhoneで撮影した映像を巨大なLEDウォールに映し出して、それを実際の背景にして撮ったりもしました。普通はCGで作るようなシーンもiPhoneで撮った現場の映像を流しているんです。 ── 機能面では、iPhone 15シリーズはUSB-Cになり、データも扱いやすくなったのでは? 三池 撮った映像をMacにそのままミラーリングできるのは確認作業ですごく助かりました。データのコピーもすぐにできますし、撮影現場でも撮った後の編集現場でも、作業効率がかなり良くなったと思います。