【F1メカ解説】本当はミニDRSを使いたかったのに……使用を制限されたマクラーレン、ラスベガスを超低ダウンフォース仕様でしのぐ
先日行なわれたF1ラスベガスGPでは、マクラーレンが大敗を喫した。後半戦では最も高いパフォーマンスを発揮してきたマクラーレンにとっては、意外な結果と言えるかもしれない。 【動画】歌舞伎+F1! 市川團十郎が、F1テーマに乗ってパブリックビューイングに登場! このラスベガスGPでマクラーレンが選んだリヤウイングは、興味深いものだったと言える。今シーズン中盤に使われ、大きく話題となった”ミニDRS”を、使いたくても使えない、初めてのグランプリだったからだ。 マクラーレンは夏休み明けに、レギュレーションに完全に準拠しながらも、負荷がかかった時にだけフラップとメインプレーンの隙間が広がる、フレキシブルに動くデザインのリヤウイングを採用した。 このリヤウイングは”ミニDRS"と呼ばれ、必要な箇所ではダウンフォースを発揮し、不必要な直線などでは空気抵抗を減らして最高速の向上に貢献するという、魔法のようなリヤウイングだった。 これにより、オスカー・ピアストリがF1アゼルバイジャンGPで優勝。しかしライバルチームはこのリヤウイングについて抗議し、FIAはコンセプトから徹底的に調査することを強いられた。 FIAとマクラーレンの間で話し合いが行なわれた結果、マクラーレンはこのミニDRSを使用せず、デザインに変更を加えることに同意することになった。 もしミニDRSの使用が許可されたままだったならば、マクラーレンは間違いなく、ラスベガスGPでもこのミニDRSを使ったはずだ。長いストレートが多数存在するラスベガスのコースは、まさにミニDRSにうってつけのコースなのだ。 しかしミニDRSが使えないため、マクラーレンはより明快な方法……つまりマクラーレンが持っている中で最もダウンフォースレベルの低いリヤウイングを使うことを選択した。このウイングは、超高速モンツァで行なわれるイタリアGPでも使われていたウイングだ。 このリヤウイングが、パーツの存在が許されている領域の中のスペースを、ほとんど取らない形になっている。つまり、最近のトレンドとも言えるスプーン形状のメインプレーンではなく、より直線的でシンプルな形状のメインプレーンとなっている。 この形状を採用すると、メインプレーンの前端が通常よりも後方に下がった位置に存在することになる。そのため、”スワンネック(白鳥の首)”のような形状をしたリヤウイングのステーも、設計を変更する必要があった。