金融サービスにおける生成AIの活用、最適運用モデルが明らかに ポテンシャルを最大化する方法とは?
人による意思決定が必要なAI活用
金融機関にとっての生成AIの採用は、コスト削減を第一義とするものではなく、主に成長を促進するものであり、投資をしたところでリターンは未知数だ。目の前の課題は、現在の銀行業務のオペレーションの改革と、混乱を限定的に保ちながら機会を最大限に生かすことのバランスだと言われており、そこには、卓越した実行力だけでなく、好奇心を中核とした革新の文化が必要になってくる。 過去のデジタル改革やスマートフォン出現の時とは異なり、銀行は生成AIによる組織への影響を避けることは出来ない。ほぼすべての銀行業務に、生成AIが関わってくることは確実だ。生成AIの選択や導入に経営陣は、戦略とビジョン、ドメインとユースケース、導入モデル、人材、リスク、変革管理など、さまざまな分野での意思決定が求められている。 現時点で「生成AIの実経験が5年以上ある」という人材は残念ながら存在しないため、この分野を外部からの採用とするか、社内で人材を育成するかも大きな意思決定事項だ。また、人材が生成AIだけでなく銀行業務を理解する必要性もあり、いわゆる中間で「通訳」をする人材も新たに必要となると見られている。
金融機関にとっての最大の敵、リスクを乗り越えた成長への道
金融機関にとって一番避けたいのがリスクだ。生成AIを活用することによって、どのように誰がリスクのガードレールを決定するかが見極めなければならない。データ保護や知的財産権、法律違反などに関連するリスクを軽減する戦略が必要だ。 また、生成AIの採用に際して、顧客が利用するユースケースなどといった特定の場合における新たなガバナンスの必要性などといった、既存のフレームワークへのリスク調整を見極めなければならない。 最適な運用モデルの選択に、金融機関には戦略的なアプローチが欠かせないと報告書はまとめている。まずは、生成AIチームの役割に対する期待値の設定や時間の経過とともに適応できる柔軟性をモデルに組み込むことなど、重点的ポイントに取り組む必要がある。同時に、スピードとリスクを伴う改革とのバランスをとりながら、生成AIのポテンシャルを最大化させなければならない。 スケーリングが容易ではないことを念頭に、急成長するテクノロジーの恩恵を最大限に得るためにはまず、適切な運用モデルを見極めることが重要なようだ。
文:伊勢本ゆかり /編集:岡徳之(Livit)