「卒FIT」で風力発電が半減の危機って、本当ですか? 電力の「地産地消」実現のカギを握る「アグリゲーター」 キーパーソンに聞く「再エネ新時代」のあるべき姿
2022年に新たに導入されたFIP制度により、日本の再生可能エネルギー市場は新たな局面を迎えています。発電する側も電気を売る側も、市場メカニズムに基づいた戦略的な経営が求められる中、両者の「つなぎ役」を果たすのがアグリゲーターという事業。縁の下の力持ち的な役割ながら、今後の再エネ普及には欠かせない存在です。 【画像】アグリゲーターの仕組みと役割 2023年にアグリゲーター事業者として株式会社再生可能エネルギー推進機構(REPO)を設立した三宅成也・代表取締役(53)に話を聞きました。(ライター・編集者/小泉耕平)
「FITからFIP」で市場環境が激変
アグリゲーターという仕事をご存じでしょうか。英語で「集める」を意味するアグリゲート(aggregate)に由来する言葉で、その名の通り分散型の電力を集めて需要家に供給する役割を担っています。 別名は「特定卸供給事業者」。電力自由化にともなって生まれた新たな事業で、日本では、2022年4月に始まった特定卸供給事業者(アグリゲーター)制度により、経済産業大臣への届け出制となりました。 2023年1月、アグリゲーター事業をおこなう再生可能エネルギー推進機構(REPO、東京都新宿区)を立ち上げたのが、代表取締役の三宅成也氏。「みんな電力」を提供するUPDATER社で取締役事業本部長を務めた新電力業界のキーマンです。社員2人のベンチャー企業(現在は4人)としてゼロからの挑戦に踏み出した理由を、こう語ります。 「2012年に始まったFIT(固定価格買取制度)は、太陽光や風力など再エネとして発電した電力を電力会社がすべて買い取ってくれるシステムでした。しかし、2022年度からは市場価格連動で補助金を上乗せするFIPに切り替わり、発電事業者は自分で買い手を見つけて契約を結んだり、発電量を予測したりといった作業も必要になります。 小規模な事業者にとっては特に困難なことで、これを手助けするのがアグリゲーターの役割。新たな市場環境の中で再エネを普及させていくためには誰かがやらなければならない仕事と考え、起業しました」 REPOは2024年8月から、福島県内にある23基の非FIT太陽光発電所からの電気を集めて、秋田県鹿角市の地域新電力「かづのパワー」に卸供給を始めました。 新制度の元では、発電事業者は設備のスペックや天気予報をもとに翌日の再エネ電源の発電量を30分単位で予測して、国の電力広域的運営推進機関(OCCTO)に計画として提出しなければなりません。実際に発電した電力量と計画のズレは、「インバランス料金」として精算されます。こうした複雑なプロセスも、REPOが個々の発電事業者に代わっておこなっています。 「多くの発電所をまとめて規模を大きくしたほうが日照量などによる変動が緩やかになり、発電量の予測がしやすくなります。予測は毎日おこなっていますが、機械学習のAIによって自動化しているので、マンパワーはほとんど必要ありません」 一方、電力を使う側では、脱炭素化を進める企業や地方自治体が増える中で、再エネへの需要が高まっています。ところが、地域新電力などの小売電力事業者は、再エネの発電事業者を集めることに苦労している例が多いといいます。アグリゲーターは電気の売り先を探す再エネ発電事業者と、再エネ電力を探す地域新電力をつなぐ役割を果たしているのです。 「固定価格での買い取り期間である20年を過ぎて『卒FIT』した再エネ発電事業者が、これまで通り大手電力会社に電力を売ろうとしたら、買い取り価格は6円/kWh程度にしかならず、とてもやっていけません。私たちを通じて地域新電力と契約した実績では、13~14円/kWhになっています。売り手と買い手をうまくマッチングできれば、『卒FIT』再エネは市場で十分に通用します」