自公3分の2は民意と呼べるのか 「本物の野党」存在せず ジャーナリスト・田中良紹
日本の民主主義が目覚める?
それがこの国の民主主義を阻んできた。つまり政権交代を阻んできた。言い換えれば本物の野党が存在しなかった。そして国民には政治の選択肢が与えられなかった。09年の民主党への政権交代を私はうまくいかないと予想していた。日本の権力構造の内実を知っている者がどれほど民主党にいるかと考えればほとんど無理だと思っていたからである。 不幸にも私の予想通り民主党政権は崩壊した。ところが国民の民主党に対する期待は大きかったらしく、民主党政権に裏切られた思いの強さが前回の総選挙の過去最低の投票率となって表れた。私は期待などしていなかったのでがっかりもしていない。本物の野党を作るための一つの段階だと思っていた。 そして生まれた安倍自民党政権は野党時代に培った権謀術数をいかんなく発揮している。その一つが今回の解散・総選挙に現れた。まさに自らの延命のためだけに投票率を下げさせる選挙を仕掛けてきたのである。そして思惑通りに最低の投票率を記録し与党は圧勝した。しかしそれは同時に国民の半数が背を向けた選挙となり、選挙の正統性に疑問を抱かせる事にもなった。 この選挙で大敗した野党は根本から野党の在り方を考えざるを得ないところまで追いつめられた。ここで今の野党が大人に脱皮できるかどうかが問われている。そうした機会を作ったのが今回の総選挙だと考えれば、最低の投票率が日本の民主主義を目覚めさせる事になるかもしれない。