畑の手入れをする喜界中女子バレーボール部の生徒たち（鹿児島県・喜界島で）

　離島でスポーツをする子どもたちの遠征費用が物価高の影響で増加している。元々、大会に出場するために島外に遠征しなければならず、飛行機代や宿泊代、食事代といった負担がかかるが、昨今の様々な物品の値上がりが追い打ちをかけている。公的サポートも十分とは言えず、子どもたち自身がアルバイトをして工面したり、遠征自体をあきらめたりするケースが起きている。（丸山一樹） 【写真】宮古島出身の元Jリーガー・上里一将さん「今の子どもたちには自分のような経験をしてほしくない」

奄美大島へ2泊3日の遠征、交通費と宿泊費で1人2万円

　「力を合わせてやろう」。9月上旬、鹿児島市から南に約370キロ離れた鹿児島県・喜界島。島内唯一の中学校、喜界町立喜界中（全校生徒163人）の女子バレーボール部の生徒6人が保護者らとともに、たわわに実ったバナナを収穫し、農園の手入れをする姿があった。

　物価高騰による遠征費の不足分を賄うため、昨年夏から月1回程度、バナナとコーヒーが栽培されている農園で手入れや収穫を手伝っている。同部には1回当たり約2万5000円が支払われる。主将の2年生（13）は「家族や先生のおかげで部活動ができる。私たちもできることをやりたい」と前向きに話す。

　約45キロ離れた隣の同県・奄美大島で大会がある場合は2泊3日の日程で遠征することが多いが、飛行機代は一昨年から約20％高くなり、ホテル代も昨年から800円ほど上がった。交通費と宿泊費で1人当たり少なくとも約2万円かかる。レンタカー代や随行する保護者の旅費も割り勘にしており、家計の負担は大きくなっている。 父母ら草刈りなどで収入、遠征費の足しに

　子どもたちの遠征費に関する国や自治体による詳しい調査は行われていない。

　ただ、公益財団法人・みらいファンド沖縄（沖縄県浦添市）が2021年度に沖縄県内の小中高生計638人を対象に行った調査では、遠征費は1人当たり平均6万969円に上った。内訳は行政補助が5970円で、PTAからの援助やアルバイト収入などが7798円。残る約8割の4万7201円分が家計負担だった。