「こんな状況は見たことがない」:フーシ派による船舶攻撃 が世界の小売 サプライチェーン に与える影響
イランの支援を受けたイエメンのフーシ(Houthi)武装組織が、スエズ運河への航路である紅海の商船への攻撃を続けていることにより、小売業者は再びサプライチェーン混乱の矢面に立つ可能性がある。しかし、サプライチェーンの問題はそれだけではない。 一部の小売業者はすでに、商品の遅延を予測して、より高価な配送方法の使用を計画している。2023年12月末に大手家具ブランドのイケア(Ikea)は、商品の配送が遅れ、一部の商品の在庫が限定されるだろうと発表した。一方、アバクロンビー&フィッチ(Abercrombie & Fitch)は、海上輸送便の代わりに空輸便を利用する予定だ。 さらに不運なことに、パナマ運河は過去70年で最悪の干ばつに見舞われており、主要な水源であるガトゥン湖の水位に影響を与えている。輸送距離が長くなることで、小売業者は中国の工場が旧正月の休業に入る前に春物の商品を受け取るタイミングを逃す恐れがある。
困難に直面している2つの航路
フーシの反乱勢力が紅海の船舶に加えた攻撃は、2024年にさらなるサプライチェーンの混乱を引き起こす恐れがある。スエズ運河は荷主が米国の東海岸や欧州まで商品を迅速に届けるための重要な通商ルートで、紅海の北端に位置している。マースク(Maersk)やハパックロイド(Hapag-Lloyd)などの大手海運会社は、攻撃を回避するため、アフリカを回る長い航路を使用するよう船舶に指示した。 アフリカ南端を回る喜望峰ルートに船舶を迂回させると、時間がかかり、大幅にコストが上昇すると、シラキュース大学(Syracuse University)でサプライチェーン管理実践の教授を務めているパトリック・ペンフィールド氏は語る。喜望峰ルートをたどると航行距離が約3500マイル(約5630キロメートル)、移動期間は約10日増えると同氏は言う。この航行期間の長期化により燃料や作業員などのコストも上昇し、最終的に消費者の負担が増えることにもなりうる。 「ほとんどの業者は喜望峰経由にルートを変更している」と、ペンフィールド氏は語る。これらの船舶は、長旅の途中で再給油を必要とするのだという。「これらの船舶の多くは現在、南アフリカで再給油をしているが、南アフリカは船舶用の燃料費が非常に高価で、もっとも高価な部類であることが知られている。この国には、こうした喜望峰を寄港する船舶に対応するためのインフラが存在しないのだ」。 困難に直面している重要な海上通商航路はスエズ運河だけではない。パナマ運河では、干ばつの影響で、1日の通過船舶数が29隻から25隻に減らされた。パナマ運河とスエズ運河は、航海時間を短縮するとともに、より危険が大きい経路を通過せずに目的地まで行けるため、国際通商においてもっとも重要な2つのルートだ。2024年2月には、パナマ運河の1日の交通量がさらに18隻に減らされる見込みだ。比較として、通常の状況ならパナマ運河は36隻までの船舶が通行できる。 「こんな状況は見たことがない。両方の運河が同時に問題を抱えるというのは驚きだ」と、ペンフィールド氏は話す。「もしあなたが小売業者なら、この事態に少し気が狂いそうになるだろう。なぜなら、従来のように配送で商品を迅速に入手するのが難しくなるからだ」。