「こんな状況は見たことがない」:フーシ派による船舶攻撃 が世界の小売 サプライチェーン に与える影響
春夏商品の品揃えに影響する可能性も
小売業者の在庫を迅速に補充するには、空輸やチャーター船などの手段もあるが、これらはコストがかかる。ブルームバーグニュース(Bloomberg News)が入手したサプライヤーへのメールによると、アバクロンビー&フィッチは混乱を避けるため空輸を中心にすることを計画している。同社は2022年にベトナムでのロックダウンによりサプライチェーンの運用が中断したときも、同じ方法を採用した。2022年第1四半期の輸送コストは、空輸の利用が増えたことで前年よりも8000万ドル(約116億円)増大した。 多くの小売業者にとって救いなのは、繁忙期であるホリデーシーズンが終わっていることだ。コンサルティング会社であるパーカーアベリーグループ(Parker Avery Group)のCEOを務めるロバート・カウフマン氏は、小売業者の春夏の品揃えに影響が出る可能性が高いと語った。たとえば英国の小売業者ネクスト(Next)は、PAニュースエージェンシー(PA news agency)に対して、商品が英国に到着するまで「2週間から2週間半」を要する可能性があると語った。イケアは2023年12月にいくつかの報道機関に向けた声明で、運輸スタッフの安全を最優先すると発表した。 またイケアは、「スエズ運河の状況から遅延が起き、特定のイケア製品について供給が制限される可能性がある」とも伝えた。
「長期的に続けられる選択肢だとは思わない」
さらに、中国の工場は旧正月で休業する。これによって、配送用コンテナが荷積みに間に合うよう到着しなければさらに遅延が発生する恐れがあると、カウフマン氏。「もし小売業者が旧正月前に商品を工場から搬出する予定だったとしても、今はそのために必要な船舶が足りないため、すでに話してきた輸送の遅延に加え、さらに2~3週間の遅延が発生することになるだろう」と、同氏は語った。 サプライチェーンの制約があるとはいえ、この問題はパンデミックのあいだに起きた混乱よりは深刻なことではないと、ヒューストン大学(University of Houston)でサプライチェーンおよび物流テクノロジーのプログラムディレクター兼指導准教授を務めるマーガレット・キッド氏は語る。パンデミック時の買い物傾向とは異なり、人々は自由裁量の商品にそれほど多くのお金を使わない。工場もまた、パンデミックの頃のようにロックダウンされてはいない。しかし、攻撃が予想以上に長引けば、問題はたちまち拡大する可能性がある。 キッド氏はコストの高騰と輸送時間の長期化について、「長期的に続けられる選択肢だとは思わない」と語る。「もし米国主導の連合がフーシ派に軍事的な対応をとった場合、事態はさらにエスカレートするだろう。それによって、これまでに見たことがない、まったく新しいシナリオが作り出される可能性がある」。 [原文:‘We haven’t seen this situation before’: A perfect storm of supply chain issues could impact retailers globally] Maria Monteros(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:都築成果) Illustration by Ivy Liu
編集部