なぜ阪神はCSファーストS下剋上を果たしたのか?
シーズン102個のエラーはリーグワーストである。プレッシャーのかかる局面に弱点が浮き彫りになる。大事なところでまたか……雰囲気が悪くなりかけたが、阪神のストロングポイントが、そのミスを帳消しにした。リーグナンバーワンの圧倒的な投手力である。 矢野監督は「島(本)だって1戦目にやられて2イニングでやり返す。優(岩崎)も粘り強くやった。ドリスが3-2になってどうなるか、と思ったが三振に取った」と語ったが、同点にされ、さらに一死満塁のピンチをドリスが踏ん張ったのである。 高橋→島本→岩崎→ドリス。そして最後が球児の2イニング締めでの見事な1失点リレーだった。 国吉に2イニングを投げさせ、自滅で阪神に先取点を許し、投げてみなければわからないエスコバーを8回の大事な場面でまた使わざるを得なかった横浜DeNAのブルペンとは明らかに安定度が違った。 出産立ち会いのため帰国したジョンソンの「空白の1イニング」をどうするかのベンチワークがポイントだったが、矢野監督は、そこを藤川の2イニング起用という短期決戦用のピースで埋めた。そして、決勝点は、矢野監督が、昨季のファームの優勝からチームに持ちこんできた機動力である。この3戦、ずっと横浜DeNAバッテリーに足でプレッシャーをかけ続けてきた。 「全員で戦う」 矢野監督は、そのフレーズを繰り返す。 横浜DeNAには43本&108打点の2冠王のソトがいて、日本を代表する主砲の筒香がいて、ロペスがいる。いわゆる軸になる選手だ。 対する阪神で“顔”となるのは、敗れたものの第2戦の9回二死から起死回生の同点アーチをかけた福留くらいで、打撃3部門で10位以内に入っているのは、打率.314で3位の糸井一人だけ。しかし、その糸井も故障で登録メンバーにはいない。自慢できる軸はないが、強力な投手陣をバックに「粘る、つなぐ、走る」で食らいつき、横浜DeNAを倒したのである。矢野監督は「全員で戦う。気持ちでカバーできるのがウチの強み」とも言うが、ポジティブな力を引き出し全員野球を可能にしたのは、攻守にわたって指揮官が貫いた攻める姿勢である。 追記するなら鳥谷の存在がある。 4回には代打・鳥谷が四球を選んだ。負けた時点で、今季限りの退団を決めている鳥谷の阪神のユニホームは最後になる。1日でも長く鳥谷と野球を続けたいーとの思いもナインをひとつにしている。 “下剋上”の完結には、東京ドームに乗り込み、9日からのファイナルステージで巨人を倒さねばならない。2014年の和田監督時代には、原監督率いる巨人を東京ドームで4タテした。再び攻めて頂点へ。 阪神には止められない勢いと根拠がある。