なぜ阪神はCSファーストS下剋上を果たしたのか?
セ・リーグのクライマックスシリーズのファーストステージ第3戦が7日、横浜スタジアムで行われ阪神が2-1で横浜DeNAを下し、2勝1敗で5年ぶり2度目のファイナルステージ進出を決めた。阪神は1-1で迎えた8回に代走・植田海の“快足”でヒット無しで勝ち越し点を奪うと、守護神、藤川球児が2イニングのスクランブル登板でリードを守った。巨人とのファイナルステージは9日から東京ドームで行われる。
球児が2回のスクランブル救援に成功
ビショビショに濡れたユニホームからTシャツに着替え、宿舎への移動バスへと歩を進める藤川球児が言った。 「僕らは守るものがないからね。攻める姿勢が、こういう結果につながった。監督の采配にも出ているよね」 投手リーダーの言葉が阪神のCSファーストステージ突破の理由を端的に説明している。 攻める――。 それが阪神の強さの秘密である。 1-1で迎えた8回。高山が死球で出塁すると、矢野監督は、代走・植田をコールした。クイックの苦手な左腕のエスコバーに対し「初球からいこうと思っていた」という植田は迷うことなく、次打者の初球にスタートを切った。CS前からエスコバーのクイックタイムが盗塁の限界値より遅いというデータは取ってあるが、牽制を挟んでくる傾向があり、最終的にはランナーの勇気が必要になってくる。 清水ヘッドがいう。 「準備はチームとしてやってきた。でも、あそこは初球からいけないよね。ほんと凄いわ」 サヨナラ負けした前日の第2戦では、7回、北條に代わって代走で出場。盗塁を仕掛けたが、大和が捨て身のタッチプレー。スパイクとベースの間にグラブを差し込まれてアウトになっていた。 「絶対にやり返したるという気持ちで走った」 ベンチの攻める姿勢が若武者を受け身にさせない。 サインはグリーンライト。行けたら行け。このサインほど難しいものはないが、植田に迷いはなかった。エスコバーの大きなモーションを盗み、楽々と二塁を陥れると、今度はワイルドピッチで三塁へ進む。そして梅野のセンターへの犠牲フライは、決して十分と言える飛距離ではなかったが、植田がタッチアップから快足を飛ばす。ヒットなし。植田の足で奪い取った勝ち越し点である。 「海(植田)の足で取った1点。昨日アウトになってんのに凄いわ。ほんま」 ベンチで矢野監督は高卒5年目の攻める気持ちに敬服していた。 そして矢野監督は、「行くしかない。同点でもダメ。球児には申し訳ないが行ききる。それくらいの信頼はあるし、迷いはない」と、藤川の8回からの投入を決断した。攻めの采配である。