なぜ阪神はCSファーストS下剋上を果たしたのか?
藤川も攻めた。8回先頭の代打・梶谷を三振。1番神里をセンターフライ。2番ソトもセンターフライ。すべて真っ向勝負のストレートだった。しかし、9回に、突然、雨が強くなりだして、マウンドがぬかるむ。藤川のような速球投手には最悪の状況。9回の先頭打者は、ポスティングによるメジャー移籍が容認され、結果的に、これが日本での最終打席となった筒香である。フルカウントからストレートをインサイドへ。筒香のバットはボールの下を振った。 ステップした足が滑り、続くロペスを歩かせた。審判団にマウンドの整備を要求。ゲームが中断して土が入れられた。その間、藤川は笑っていた。最悪コンディションにも動揺などない。 思えば阪神は雨のCSにいい思い出はない。2年前は、泥んこの甲子園で横浜DeNAに下剋上を許した。しかし39歳のベテランにトラウマなどなかった。 マウンドの整備が終わると、宮崎のバットをストレートで押し込む。ポーンと打ち上げてのファーストフライ。そして、昨夜、阪神に悪夢のサヨナラ2ランを浴びせた代打・乙坂を打席に迎えた。 その初球は雨で指が滑った。だが、藤川は薄笑いを浮かべていた。2球目はフォーク。完全にタイミングを外された乙坂の打球が、当たり損ねのピッチャーゴロになった。珍しく藤川がガッツポーズ。そしてレフトスタンドのファンに手を振った。 魂の28球が雨のハマスタにぶすぶすと燃え上がった。 試合後、矢野監督も興奮していた。 「いつものウチの野球。特別なことはしていない。オレはそれしかできないし、ひとりひとりがつながっている感じがして嬉しいね。戦っている気持ちが伝わってくる。選手が、自分の思っているよりも、さらにその上のもの、気持ちを見せてくれている。ほんと素晴らしい。誇りに思う」 なぜ阪神はCSファーストSを突破できたのか。 筆者は、この第3戦に今シーズンの阪神が凝縮されて現れると思っていた。7回、同点にされたのは、三塁・北條のミス。一死満塁で正面のゴロに足が動かず、しかも、ひとつはアウトにできたが、焦ってジャックル。オールセーフにした。