なぜ韓国の大統領は「汚職→失脚」を繰り返すのか…日本では考えられない「縁故がモノを言う」腐敗の構造問題
■「戒厳令」の背景に大統領婦人への疑惑 12月14日、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の弾劾訴追案が国会で可決され、大統領は職務停止となった。3日夜には突如として“非常戒厳(いわゆる戒厳令)”を宣言した。今回の宣言は44年ぶりで、1987年の民主化以降で初めてだ。 【画像】11月29日のソウル市内の様子 急遽設置された戒厳司令部は、一切の政治活動を禁じメディアも統制した。それに違反した場合、令状なしに逮捕・捜索を行う旨も発表した。武装した兵士が国会に突入した様子も流れた。一時、韓国全土が混乱に巻き込まれ、国民の多くが宣言に反発するスタンスを示し、ソウルの国会付近には10万人を超える民衆が抗議のために集まった。尹大統領は反対の圧力に抗しきれず、4日未明、非常戒厳体制は解除された。 今回の非常戒厳の背景には、大統領の夫人である金建希(キム・ゴンヒ)氏に関して数々の疑惑が浮上したことがあったとみられる。最大野党の“共に民主党”に加えて、与党“国民の力”の内部からも夫人の調査を求める声が上がっていた。尹大統領の側近も、同氏から離反する動きが顕在化したようだ。大統領としては、そうした状況を逆転させようと窮余の一策を打ったのだろう。 ■「切迫感があった」自身も認めた政権への逆風 ただ、大統領の最後の賭けは見事に失敗し、野党から弾劾訴追を突き付けられることになった。7日、与党の多くの議員が投票せず大統領の弾劾訴追案は不成立となったが、韓国の政治、経済、安全保障体制の不安定化は避けられない。今後、北朝鮮をめぐる情勢にも変化が出るようだと、極東情勢の緊迫感は上昇し世界経済の先行きにもマイナスの影響が及ぶことは避けられないだろう。 7日、大統領談話の中で尹氏は、国政の最終責任者である大統領としての“切迫感”が宣布の理由だと認めた。大統領に切迫感を募らせた要因はいくつか考えられる。 まず、何といっても大統領の支持率が低下した。2022年5月の大統領就任直後、尹氏の支持率は高かった。発足から2カ月ほど経過すると、不支持が支持率を上回るようになった。2023年5月の支持率は30%台の前半、不支持率は60%程度だった。2024年4月の総選挙で尹氏が所属する国民の力は敗北し、支持率は20%を下回った。11月下旬の支持率は19%だった。