「円高になったら、日本株は売りですよね?」“円安の反動”に警戒強まるも…いま本当に恐れるべき「円高よりヤバい大惨事」【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフグローバルストラテジスト】
※本稿は、チーフグローバルストラテジスト・白木久史氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。
------------------------------------- 【目次】 1.「円高イコール株安」なのか 2. パブロフの犬が食いそびれる「ご馳走」 3. 本当にヤバいのは円高とは真逆のアレ ------------------------------------- 【関連動画:「世界株指数さえ買っていればOK」という勘違い】 「円高になったら、日本株は売りですよね?」とよく聞かれます。円高には金融引き締めと似た効果があることや、自動車など輸出産業の業績にマイナスとなることから、こうした印象を持つ方が多いようです。一方で、資源やエネルギーを輸入に頼る日本にとって、過度な円安は産油国などへの支払いが膨らむことで実質的に増税のような影響が生じるため、景気や株価にマイナスに働く側面もあります。そこで今回は、為替と株価の関係について、改めて過去の数字を確認していきたいと思います。
1.「円高イコール株安」なのか
■「円安イコール株高」、「円高イコール株安」というイメージがすっかり定着しています。自動車など日本を代表する主要な製造業の業績が円高によりマイナスの影響を受けることや、長らくデフレに苦しんできた日本経済が、円安による「リフレ効果」を渇望していたこともあって、為替と株価には逆相関の関係がある、というのが一般的な認識となっています。 ■1972年から2023年までの52年間を振り返ると、5%超の円高となった年は28回(年)ありました。こうした円高の年の日経平均株価の平均騰落率は年率で+2.77%でした。一方、5%超の円安となった年はこの間17年、平均騰落率は同+7.87%となっています。ちなみに、52年間の平均は同+7.54%ですので、「円安は株高」というのは少し言い過ぎで、「円高だと株価はパッとしない」と言うのが実態に近いようです(図表1)。 <過去のトラウマが刷り込む「円高イコール株安」というイメージ> ■ちなみに、円高の時期と円安の時期の株価騰落率に大きな差が生じた要因を詳しく見ていくと、状況はそんなに単純ではないことがすぐにわかります。というのも、1990年の「バブル崩壊」、2008年の「リーマンショック」、そして2011年の「東日本大震災」といった、いわゆる「テールリスクの年」がことごとく「5%超の円高を伴う大幅な株安の年」となっているからです(図表2)。 ■当たり前の話ですが、円高が激甚災害やバブルの崩壊を引き起こしたワケではなく、未曽有の惨事や経済の混乱が株安や円高を招いた、というのが実態でしょう。つまり、大幅な株安時の円高は、市場におけるリスクオフなどの結果であって、原因ではないのです。そう考えると、こうしたリスクオフ局面での「円高と強烈な株安」が市場参加者にとってある種のトラウマとなり、「円高イコール株安」の刷り込みが進んだのかもしれません。
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