読書の喜びを生涯のものに。刷新されたKindle Paperwhiteを試す
■画面サイズと合わせられる本、合わせられない本がある その一方で、Kindleの専用電子書籍コンテンツは、今なお、「なんちゃって」仕様のものが散見される。専用端末以外に、スマートデバイスのアプリでも楽しめるのがKindleコンテンツの強みだが、その中には電子化されてはいるものの、PDFや画像として提供されているコンテンツがある。それが多彩なディスプレイサイズに追いつけない。 マンガ本の電子版はその代表例だともいえる。実物大のコミックサイズでマンガを楽しもうとすると、新書版、B6版、四六判サイズが必要で、雑誌連載時のサイズを求めるならB5版と、見開き表示の実物大表示は最大サイズのディスプレイをもつKindle Scribeでも無理だ。何しろ実物大でもまだ小さいと感じるユーザーが一定多数いる。 だが、内容構成する要素の大半が文字である小説や、ノンフィクションといったコンテンツについては、リフローの仕組みで本文に設定した文字サイズや画面サイズに応じてテキストやレイアウトがダイナミックに再構成されて表示されるので、これらの要素が固定されたフィックス型のコンテンツに比べ、圧倒的に扱いやすくなる。 何しろ、読者側が文字のサイズや行間などを自由に設定し、もっとも読みやすい状態で表示できるからだ。一般的なコミックがリフローコンテンツとして成立しない理由は、この自由度がコンテンツに向いていないからということもできる。あちらをたてればこちらがたたずというわけだ。 ■文字を調整できる端末は読書の楽しみを支えてくれる 高齢者や弱視のエンドユーザーにとって、Kindleのような読みやすくモビリティの高い端末の存在は読書の救世主だともいえる。移動中に読書を楽しむという何十年も続いている習慣をキープできるのはうれしい。 もちろんアプリを使って大画面テレビでコンテンツを楽しむといった方法もある。iPhoneのKindleアプリで見開き表示中のコミックは、そのコンテンツネームの文字を読むのも小さすぎて難しい。でも、50インチのテレビに表示すればまったく問題ない。それが電子書籍の醍醐味だ。おかげで老眼になっても少年コミックを楽しめる。 Kindleのような専用端末は、書籍を読む楽しみを生涯の喜びとしてもたらしてくれる。それこそがデジタル社会の目に見える恩恵であり、個人的にも、Kindleのような端末と、そのコンテンツサービスの存在はありがたいし、この先も愛用したいと思っている。それだけに、今回の新ハードウェアへの刷新は地味ではあったとしてもうれしい。Amazonがこのサービスを継続することを保証しているように思えるからだ。 だが、ひとつだけ苦言を。コンテンツの表示については問題ない。でも、KindleやKindle PaperWhiteにはホーム画面コンテンツのレイアウトサイズ変更機能がない。OasisやScribeにはレイアウトとして「標準」と「拡大」が用意されていてライブラリのコンテンツ一覧や設定画面などを、多少は拡大表示して見やすくできたのだが、それができない。 何が困るかというと、自分のライブラリの一覧から、読みたいコンテンツを探すのに、表示が小さすぎて困ってしまうのだ。コンテンツの中身の表示についての自由度が高いだけに、このあたりもきちいんとケアすることを望みたい。不満といえばそれだけだ。 ■ 著者 : 山田祥平 やまだしょうへい パソコン黎明期からフリーランスライターとしてスマートライフ関連の記事を各紙誌に寄稿。ハードウェア、ソフトウェア、インターネット、クラウドサービスからモバイル、オーディオ、ガジェットにいたるまで、スマートな暮らしを提案しつつ、新しい当たり前を追求し続けている。インプレス刊の「できるインターネット」、「できるOutlook」などの著者。
山田祥平