米の長距離ミサイル使用許可、ウクライナ支援で同盟国再結集に至らず
(ブルームバーグ): バイデン米大統領はウクライナが長距離ミサイルをロシア領内への攻撃に使用することを許可する決定を下したが、同盟国の幅広い支援を促すことはできていない。来年退任するバイデン氏の影響力低下をうかがわせた。
ロシアの軍事目標を米国製長距離兵器で攻撃することをバイデン氏がウクライナのゼレンスキー大統領に許可する見通しが判明するとすぐにドイツとフランス、英国のスタンスに関心がシフトした。ウクライナ政府が求めている長距離ミサイルを独仏英3カ国も保有しているからだ。
ドイツのショルツ首相は従来、ロシアからの報復が懸念されるものの、この紛争ではバイデン氏と足並みをそろえてきた。米国とドイツは2023年にウクライナ政府への戦車供与について共同発表を行い、今年5月にはロシア領内へのより限定的な砲撃を許可することで合意した。
しかし、ショルツ氏は今月18日、バイデン氏の決定は今の紛争激化懸念に勝るものではないと明言した。来年就任するトランプ次期米大統領はウクライナ支援を縮小し戦争の計算式を変える考えを示唆しており、バイデン氏の決定に影を落としている。
ショルツ氏は20カ国・地域(G20)首脳会議の開催地ブラジルのリオデジャネイロで記者団に対し、ウクライナに長距離ミサイルを依然として送らない理由について、「ドイツの多くの国民が欧州の安全と平和について懸念を抱いているからだ」と説明。「慎重に行動する必要がある」と述べた。
3年近くにわたる戦闘でウクライナの市民や同盟国の間には冬が近づく中で戦争疲れが広がっている。ロシア軍はゆっくりと前進しており、着実な攻撃でウクライナのエネルギーインフラは打撃を受けている。
リオデジャネイロ入りしていた仏英両国の代表団は、バイデン氏の決定後、より慎重な姿勢を見せた。スターマー英首相の顧問らは、英国製の長距離ミサイル「ストームシャドー」の使用に関する方針について言及を控えた。スターマー首相は以前、ウクライナへの同ミサイルの供与に賛成の意向を示していた。