藤原竜也『全領域異常解決室』オカルト要素強めで人を選ぶが…ぬめっとしてゾワゾワする “気持ち悪さ” が最高!
個人的には「この “気持ち悪さ”、おもしろっ!」という感想。 だが、万人におすすめできる作風ではなく、人を選ぶドラマだとも思う。 藤原竜也主演で10月16日(水)に第2話まで放送されている『全領域異常解決室』(フジテレビ系)のことだ。 簡単に説明すると、猟奇殺人といった異常事件を解決していく1話完結型ミステリーなのだが、主人公が神、妖怪、UMA(ユーマ)など、非現実的な存在の可能性を示唆し、捜査していくストーリー。そのため、オカルトやホラーが絡んでくる作風を好まない人にはおすすめはしない。 ■【ネタバレあり】真相はオカルト? 人間の仕業? 警察官・雨野小夢(広瀬アリス)は、ある日突然、内閣官房直轄の機関「全領域異常解決室」、通称「全決(ゼンケツ)」に出向することになり、室長代理の興玉雅(藤原)とバディを組むことに。 「全決」は大和朝廷時代からある世界最古の捜査機関で、超常現象による異常事件を捜査する組織とのことだが、内閣官房直轄でありながら、ハタから見ればかなりうさん臭い組織。 第1話から縦軸の事件として描かれているのが、謎の神・ヒルコが犯行声明を出している連続怪死事件。大量の血液や毛髪、衣服だけが残されるも遺体が消え去っており、「神隠し」として世間で騒がれている。 そして、第1話では「神隠し」かと思われた怪死が、神・ヒルコかシャドーマン(光る人型UMA)が関与した可能性を指摘。第2話では、とある女子高で起きた生徒の集団失神について、キツネ憑きの可能性を示唆した。 ネタバレになるが、第1話も第2話もオカルト的な存在が示唆されるも、結局は、興玉が人間が仕組んだトリックだと看破し、現実的な着地で解決。つまり、犯人たちはオカルトを利用して事件を隠蔽するつもりだったわけだ。 これで完全解決となれば、オカルトを装った犯人たちを暴く『金田一少年の事件簿』的な作風だと思えるが、そうきれいに終わらないのが本作の特徴。 第1話の犯人は、逮捕されてからもモヤのような黒い陰が見えるという供述を続け、ヒルコの存在におびえ続けている。第2話の集団失神はガスが原因とされたが、その程度であの異様な事態が起きるとは思えず、かなり違和感がある。 要するに、一応は現実的・科学的な結論が導き出されているものの、ぬめっとした気持ちの悪い消化不良感があえて残されており、ホラー味がある作風となっている。 ■科学的とオカルト的のバランスが秀逸 “オカルトミステリー” というクセの強さを受けつけない人は、この作品にハマらないだろうが、そういうテイストが大好物の人は絶対に観たほうがいいと断言できる。 特に優れているのは、現実的・科学的な要素と、オカルト・ホラーの要素のバランス感覚。前述したとおり、第1話も第2話も人間の犯人がおり、一応は論理的な説明がつくのだが、得体の知れない超常の気配が常につきまとっている感覚が、絶妙な塩梅なのである。 第1話の事件が解決した後、雨野が「もしかしたら本当に私たちの常識を超えるなにかが、事件の裏に存在したのかも」と語ると、興玉がこう答えるシーンがあった。 「すべてわからなくてもいいじゃないですか。いまの人間はすべてを理解しようと、自分に都合のいい情報だけ拾って、都合のいい解釈をして、必死に答えを見つけようとする。だから、世の中が息苦しい。わからないものを、わからないまま受け入れる余裕を持ってください。それが『全決』でうまくやっていくコツです」 この主人公のセリフ、うがった見方をすれば、視聴者から粗をツッコまれないための脚本家の予防線、あるいは制作陣が綿密な物語を生み出すことを放棄しているようにも思える。 しかし、筆者は好意的に解釈している。劇中で理路整然と説明されない「わからないもの」があることで、作品全体がいい意味でゾワゾワする “気持ち悪さ” に包み込まれているからだ。 本作の脚本家は、近年、TBSの看板ドラマ枠「日曜劇場」で『グランメゾン★東京』(2019年)、『TOKYO MER~走る緊急救命室~』(2021年)、『マイファミリー』(2022年)、『ラストマン-全盲の捜査官-』(2023年)などのヒット作を連発している黒岩勉氏。 オカルト・ホラー要素のバランスも秀逸だが、1話完結ながら短時間で二転三転する構成もみごとで、現在のドラマ業界で実力が高く評価されている黒岩氏の筆力はさすがだと唸らされる。 今夜放送の第3話では、過去や未来とつながる異次元媒介装置「タイムホール」の関与が疑われる事件が発生する。今回もぬめっとしたゾワゾワ感をぞんぶんに味わわせてほしい。 ●堺屋大地 恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『現代ビジネス』『集英社オンライン』『日刊SPA!』などに寄稿中