暗号資産所得の分離課税は今年、税制改正要望が認められるのか
金融庁は8月30日、税制改正要望項目をとりまとめた「令和7(2025)年度 税制改正要望について」を発表した。主な要望項目は、 1.「資産所得倍増プラン」及び「資産運用立国」の実現 2.「世界・アジアの国際金融ハブ」としての国際金融センターの実現 3.安心な国民生活の実現 の3つに分けられている。 暗号資産業界あるいは暗号資産ユーザーとして注目すべきは、1.「資産所得倍増プラン」及び「資産運用立国」の実現 だ。ここはさらに「NISAの利便性向上等」「企業年金・個人年金制度の見直しに伴う税制上の所要の措置」「上場株式等の相続税に係る物納要件等の見直し」「金融所得課税の一体化(金融商品に係る損益通算範囲の拡大)」の4項目があげられ、暗号資産は4つ目の「金融所得課税の一体化」の中で、以下のように記している。 「なお、暗号資産取引に係る課税上の取扱いについては、暗号資産を国民の投資対象となるべき金融資産として取り扱うかなどの観点を踏まえ、検討を行っていく必要」 暗号資産に係る所得は現在、最高55%課税される「雑所得」とされており、業界団体は長年、その見直しを求め、他の金融所得と同様の分離課税の適用を要望している。 日本ブロックチェーン協会(JBA)は7月19日、「暗号資産に関する税制改正要望」を、日本暗号資産取引業協会(JVCEA)と日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)は7月30日、「2025年度税制改正に関する要望書」を取りまとめ、関係省庁に提出している。 関連記事:「第1のバリア」を解決、税制改正要望を提出:JBA──重要ポイントをJBA税制分科会長に聞く【インタビュー】 関連記事:JVCEAとJCBA、税制改正に関する要望書を発表 前述の「金融所得課税の一体化」の項目では、「要望事項」として「金融商品に係る損益通算範囲をデリバティブ取引・預貯金等にまで拡大すること」と記されている。つまり、「要望事項」の中に暗号資産はあげられていないものの、「金融所得課税の一体化」という大きな項目の中では、暗号資産も取り上げられている。 暗号資産に係る所得について、現行の最高55%の雑所得ではなく、20%の申告分離課税とし、加えて損失繰越控除の対象とすることは、個人投資家の暗号資産取引を促進し、市場を活性化させるために業界が熱望している。 一昨年、昨年と2年連続で暗号資産に関わる税制改正が進んだこともあって、所得税の改正は「今年は難しいのではないか」との見方もあったが、金融庁の「税制改正要望」に、直接的な要望項目ではないにせよ、暗号資産についての記載があったことは、ひとつの前進と言えるのではないだろうか。 米国では大統領選挙で暗号資産がひとつの争点となっているが、日本でも9月4日、国民民主党代表の玉木雄一郎氏が自民党総裁選挙に言及し、「暗号資産に係る税制と規制の見直し」についてXに投稿している。 自民党総裁選挙で金融資産課税がテーマとなりそうとのことですが、日本の暗号資産に係る税制と規制の見直しも、ぜひ議論してもらいたいものです。… ― 玉木雄一郎(国民民主党代表) (@tamakiyuichiro) September 4, 2024 税制改正要望は、各省庁が財務省と総務省に提出。その後、与党(自民党)税制調査会が審議し、「税制改正の大綱」を作成、年末に閣議決定される。その後、財務省、総務省が改正法案を作成、国会での審議が行われる。 Web3マスアダプションに向けて期待される暗号資産の所得税の見直し。一部厳しい見方もあった分離課税の導入が今年、税制改正で認められれば、2025年度から新しい規則が施行され、適用される可能性もある。 |文:増田隆幸|画像:Shutterstock※編集部より:タイトル、本文を修正し、更新しました。
CoinDesk Japan 編集部