異国の店主と土地の味/タイ料理店『J’s Cafe & Restaurant』
各地のローカルな風を届けてくれる東京近郊の外国料理店の店主を、 料理家の土井光さんと巡るコラム。
土井光(以下、土井) 『J’s Cafe & Restaurant』がある横浜の伊勢佐木町には、他にもいくつものタイ料理レストランがあるんですね。タイ式マッサージのお店も至るところにあって、歩いているだけでタイ旅行に来た気分です! 明るい店内にはタイ人の方でいっぱい。夕方の時間もオープンされていて、テイクアウトのお客様も沢山いらっしゃいます。
アロム・ホムスワン(以下、ホムスワン) そうですよね。私はタイで知り合った日本人と結婚した後、1993年に来日して川崎に住んでいたのですが、伊勢佐木町に初めて遊びに行った時はタイ人ばかりで驚きました。今でもレストランは10店舗ほど、マッサージは50店舗ほどありますが、当時は今以上に在日タイ人が多かったんですよ。タイ料理レストランのコックをして欲しいと知り合いに声をかけてもらって、私もこの街に引っ越してきました。
土井 50店舗も…! 声がかかった頃は、違う飲食店で働いていたんですか?
ホムスワン 病院で介護ヘルパーをしていました。介護の仕事は、タイにいた時もしていたんです。でも、飲食店で仕事をするのが好きで、来日後に居酒屋やラーメン屋やイタリアンでアルバイトをしていた時期もあったほどなので、とても嬉しいお誘いでしたね。
土井 コックとして雇いたいということは、きっと料理がお上手だったのでしょうね。
ホムスワン タイでは料理学校にも通っていましたし、子供の頃から料理ばっかりしていたんですよ。私には妹と弟が5人いるのですが、朝5時から仕事に行ってしまう両親の代わりに、私1人で家族全員分の食事を作っていました。ガスがないから火を起こすところからやって、レシピは近所の人に聞いたり、自分でいろいろ試してみたり。その時はまだ、8歳くらいだったかな。
土井 8歳からすでに立派な料理人だったんですね! 長年の経験でレパートリーも豊富だからか、メニュー数がとにかく多くてびっくりです。サラダから魚料理、米料理に麺類まで、選ぶのが楽しくて大変(笑)。
ホムスワン 私の出身地である中部のものも含め、タイ全域の料理を作っています。開店当初からメニュー数は多くて、減らそうと思ってはいるのにむしろ増えていくんですよ。あれやりたい、これやりたいって発想力が尽きなくてね(笑)。