“なまはげの聖地”を走る「JR男鹿線」で“無賃乗車”横行疑惑 知られざる不正の温床とは
キセルを積極的に捕まえる車掌もいる
その一方で、使命感をもって仕事をする職員がいるのも事実だ。こちらも既にJR東日本を退職したというB氏は、若者にしては珍しく集札をしっかりしたり、駅員時代も営業規則を常日頃から読み返してクレーム客を撃退したりしていたという。A氏は、不正乗車を絶対に許さなかったという車掌B氏の武勇伝をこう話す。 「男鹿線の途中駅で、女子高生がすり抜けて行こうとしたため、階段を上って駅の外まで追いかけたそうです。普通列車でも何度も検札をして、キセルを何人も捕まえていました。年々ワンマン化が進み、無賃乗車が横行するような制度へ変えていく会社のやり方が嫌だと常日頃から話していました」 B氏は、キセルをしていた女子高生を叱り、何度も泣かせたことがあるという。B氏の行動は、一部の人からが「常軌を逸している」といわれるかもしれない。しかし、こうした抑止力みたいな人がいなければ、キセルが横行するのも当然だろう。B氏は“バリバリの鉄道オタク”であり、愛する鉄道で不正乗車が行われている実態を許すことができなかったようだ。
「男鹿線において、無賃乗車は行われていないという認識」
こうした問題を、JR東日本はどこまで把握しているのか。デイリー新潮編集部では、JR東日本秋田支社の広報担当者に電話で話を聞いた。 ――男鹿線で無賃乗車が相次いでいるとの情報を耳にしたが、どこまで実態を把握しているのか。 広報:男鹿線において、無賃乗車は行われていないという認識です。基本的に所定の乗車券をお買い求めの上、もしくは定期券をご利用の上、乗車いただいているという認識です。 ――現在のようなワンマン運行になってから、無人駅から無人駅の利用については、いくらでも無賃乗車ができる環境にあると思う。無賃乗車を防ぐための対策は行っているのか。 広報:無賃乗車を防ぐ対策は行っていない。ただ、この仕組みを導入してからは、無人駅に運賃箱を設置していますが、この運賃箱自体が盗まれないように、監視カメラを設置しています。 ――防犯カメラで、無賃乗車をしている人を発見した場合、その人に注意するといったことはやっていないのか。 広報:Suicaを持っていれば、Suicaをタッチする機械にタッチしてもらえればいいのだが、磁気式の定期券であれば、無人駅であれば素通りでも問題はない。運賃箱に何もせず、スイカの機械にもタッチしなかったといって、それで無賃乗車と断定できるわけではありません。 ――現在のワンマン運転の体制になったのはいつからなのか。 広報:2021年の3月のダイヤ改正から。それ以前は車掌が乗車し、乗車券の販売や乗車券の受け取りを行っていました。なぜワンマン運行になったのかはすぐにお話しできる情報がありません。