「〇〇と言えば?」“真っ先に思い浮かぶ企業”になるマーケティング戦略とは?
想起を上げるには、プレファレンスを上げることが重要
では、どうやって想起を上げていけばよいのか。「想起を高める施策はない。想起は結果なので結果を向上させるためには何かのインプットをしなければならない。そのインプットがプレファレンスだ」と池田氏。
プレファレンスは、価格、ブランド・エクイティ、製品パフォーマンスの3つからなる。この3つによって、プレファレンスが変動し、プレファレンスが上がると、想起が上がり、売上が上がるという関係だ。
プレファレンスとは何かというと、日本語で言うと好み、好意、ひいきといった意味になる。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのV字回復の立役者として知られるマーケター・森岡毅氏はプレファレンスを「サイコロの目が出る確率」と表現している。たとえば、あなたが年間で30本、ペットボトル飲料を買うとする。この時、あなたは店や自販機の前で、無意識にサイコロを振っていて、サイコロで出た目が想起され、購入しているというイメージだ。
目が出る確率は均等ではない。自社製品を買う目が出るのか、A社か、B社なのか、出る目の確率はプレファレンスを構成する価格、ブランド・エクイティ、製品パフォーマンスに影響を受ける。池田氏が詳しく解説していった。 ■ 価格 価格は高くなればなるほど、プレファレンスは下がる。たとえば、いい製品であっても価格が高いと日常的に購入できないのでプレファレンスが上がらず、想起されないので購入されない。価格は低い方がプレファレンスは上がる。ただ例外として、プレミアムブランドや、ラグジュアリーブランドは価格が下がると逆に売れなくなる。 ■ ブランド・エクイティ
ブランド・エクイティは人によって定義が分かれるところだが、池田氏は、ブランド論の大家であるデイヴィッド・アーカー氏による定義を紹介し、以下の図を示した。
アーカーの定義ではブランド認知、知覚品質、ブランド連想、ブランドロイヤルティ、その他資産の総和がブランド・エクイティである。いわゆる、認知や、ブランドに紐付いたキャラクターやコンテンツから連想される幅が厚ければ厚いほど、プレファレンスに好影響を与える。 ■ 製品パフォーマンス 製品パフォーマンス(性能や使い勝手)は、多くのマーケターが商品の企画・開発・改善に直接関わることが少ないので悩ましいと、池田氏。しかし、プレファレンスにおける製品パフォーマンスの影響は大きい。良い製品であれば良いレビューが書かれ、悪いと悪いレビューが書かれる。レビューは、商品の購入を本格的に検討している顧客に大きな影響を与える。 製品パフォーマンスは価格設定と同様、担当部門が異なるため、広告・PR・SNS担当などが介入するのは難しい。よって、マーケティング・コミュニケーションの担当者が影響を与えることができるのは、ブランド・エクイティだと池田氏。ブランド・エクイティの「認知」「知覚品質」「連想」を上げることによって、プレファレンスを上げ、想起を上げ、売上に影響を与えるのが、広告・PR・SNS担当者のできることだ。