だから「国保加入者」「65歳以上」はメタボ率が上がる…高すぎる国保料が生みだされる"負のスパイラル"
医療費を下げるにはどうすればいいのか。ジャーナリスト・笹井恵里子さんの新著『国民健康保険料が高すぎる! 保険料を下げる10のこと』(中公新書ラクレ)より、一部を紹介する――。(第3回/全3回) 【この記事の画像を見る】 ■保険診療を減らすべきか? さて国保の制度維持が厳しいというと、財源への指摘の一方で、支出の面である「命にかかわらない診療は“保険の対象”から外すべきだ」という指摘がしばしばなされる。Yahoo!のコメントでもよく見かけるし、私のブログにもそういった声が寄せられる。しかし長友氏はこれを否定する。 「アメリカの医療費はものすごく高いでしょう。あそこは高齢者や障害者、低所得者以外は公的な医療保険がありません。つまり日本における“診療報酬”がなく、“医者の言い値”なのです。ある治療を医者が10万円といえば10万円になる。風邪薬や湿布薬なら保険診療から外せばいいのではないかという声がよくありますが、自由診療が増えるほど医療費が膨らむのです。公的医療保険があり、診療報酬制度があるから、医療費がコントロールされている。軽症段階で病院に気軽にいけるから、重症化しない。“保険診療のほうが医療費がかかる”というのは幻想です」 ■出産費用だけが高騰していく理由 自由診療が増えるほど医療費が膨らむというのは、「出産費用」がそれに近い様子を表していると思う。 日本では病気ではないという概念から、妊娠・出産費用が保険適用ではなく、その代わり出産した者には出産育児一時金が支給される。しかし、出産育児一時金が増額されれば、医療機関の価格改定がされ、またさらに出産費用が吊り上がるという循環に陥っている。実際、出産育児一時金制度がスタートした30年前は、30万円の支給額。私もおよそ20年前に2人の子どもを出産しているが、30万円台前半の額で出産が可能だった。当時と比べて今の出産にまつわる環境が劇的に変化したわけではないのに、出産費用だけが高騰していく状況に違和感を覚える。 もし日本で自由診療がどんどん増えていき、一方で低所得者が医療を受けられない状態になれば、さすがに国は何もしないわけにはいかない。公費を投入することになり、その額がどんどん膨らんでいき、医療費が今よりも高くなる可能性がある。保険診療があるからこそ医療費がコントロールされているのは、まさしくその通りだ。だから私たちが支払う保険料をこれ以上上げないためにも、「保険診療」は維持したほうが良いのだ。