ロータリーエンジンの栄枯盛衰 名車・珍車36選 前編 メーカー各社の挑戦
長所
ヴァンケルローターの作動が非常にスムーズなのは、1回の燃焼サイクルが比較的小さいことと、ローターが常に動いているためである。従来型のピストンはシリンダー上部で一旦静止し、加速してから減速してシリンダー底部へ向かい、再び加速してシリンダー上部へ戻るというプロセスを繰り返す。これは、わたし達が思っている以上に大きな問題を生むが、ロータリーではまったく問題にならない。 また、ロータリーはピストンエンジンよりも長さが非常に短い。たとえばフロントに搭載した場合、その質量は車体の中心近くに集中する。重量配分の面では有利であり、ロータリーエンジン車がしばしば非常に優れたハンドリングを発揮する理由の1つとなる。
短所
ロータリーエンジンの性質上、燃料を取り込み、排気するという循環をほぼ絶え間なく行う。これは燃費と排気ガスに悪影響を及ぼすことが多く、前述の長所にもかかわらず本格的に普及しなかった主な理由の1つである。また、ロータリーはトルクの細さがよく知られている。ローターは常に回転しており、ピストンをシリンダー内に押し込む燃焼の力には及ばない。 ロータリーが大きなパワーを生み出すのは、回転数が高いからであって、トルクのおかげではない。さらにもう1つ、ローターの先端がチャンバー内を傷つけることなく完璧にシールしなければならないという問題もある。失敗すると悲惨なことになり、通常はエンジンを廃棄しなければならない。
NSUスパイダー
現在はフォルクスワーゲン・グループのどこかに埋もれてしまったNSUだが、ヴァンケル型ロータリーエンジンに真剣に取り組んだ最初のメーカーである。1957年にプロトタイプを走らせ、その7年後には後発のエンジンを市販車に搭載した。 それがセダンのプリンツから派生した美しい小さなスパイダーだ。シングルローターエンジンをリアに搭載し、コンペティションで大成功を収めたが、メガホンマフラーを装着した場合、その音は驚異的だった。