長引くインフレ、育児サービス施設不足で、保育コスト高騰に悩む米国。夏休みの過ごし方にも影響
大統領選の切り札にもなり得る、育児コストの問題
米国保健福祉省(HHS)は、育児にかかる費用が世帯収入の7%以下であれば、その料金は手頃とみなしている。ところが、17カ国以上の家庭や職場で何百万もの家族を支援するCareが毎年行っている、両親への聞き取り調査をまとめた「2024 コスト・オブ・ケア・レポート」によれば、その割合は24%に上るそうだ。米国における郡レベルの保育コストに関する最も包括的な情報源、米国労働省女性局による「ナショナル・データベース・オブ・チャイルドケア・プライス(NDCP)」によれば、2022年には世帯収入の中央値の8~19.3%が保育コストにあてられているという。 NDCPは2022年、子ども1人に対する保育コストは、5,357米ドル(約77万6,000円)から1万7,171米ドル(約250万円)と発表している。これは、子どもが1人以上いる世帯では、負担はさらに重くなっていく。保育サービス提供者の種類、提供される保育の質、サービスを受ける子どもの年齢、および場所によって大きく変わってくる。 保育コスト高騰にあたり、政府は、チャイルド・アンド・ディペンデント・ケア・クレジット(子女養育費税額控除)を行っている。これは、13歳未満の子どもの保育コストを対象とした税額控除だ。それにも関わらず、貯金から保育コストを捻出せざるを得ない親は35%に上る。 また、保育コストを上げる原因の1つになっていると考えられているのが、保育サービス提供施設の減少だ。全国の育児プログラムを支えてきたコロナパンデミック時代の資金が2023年9月で終わってしまったのだ。240億米ドル(約3兆4,800億円)が、施設を支援していた。おかげで、2020~2021年にかけて施設、スタッフの数とも減少。生き残った施設は、インフレも手伝って、コストを上げた。 貯金から保育コストを捻出している親のうち、貯金のほぼ半分が保育に消えていっている親が42%おり、さらに3分の2以上を費やしている親も25%を占めた。 施設が少なくなったことで、施設のキャンセル待ちリストに、子どもを入れて待つ中、親は金策を練り、職場に融通を利かせてもらえるよう交渉する。ベビーシッターや放課後のプログラムなどをあちこち併用することで何とかしのいでいるという。 もうすぐ米国では大統領選挙が行われる。「2024 コスト・オブ・ケア・レポート」では、候補者の育児政策に対する立場が投票に影響を与えると回答した親は88%、大統領選討論会で大統領候補者の口から育児についての意見を聞くことが大切とした親は91%にも上った。討論会で取り上げてほしい最優先のテーマを尋ねられた際、親たちは経済に続いて育児を選んだ。Careは親たちが解決策を求めている育児コストと、それが親に与えるストレスが大統領選挙の勝敗を決める重要な要素となり得るとしている。
文:クローディアー真理 /編集:岡徳之(Livit)