「IT革命」からすでに四半世紀も経っているのに「パソコンは苦手」と言い続ける人に欠けているモノ
さらに言えば、ポータルサイトの「Yahoo! JAPAN」が開設されたのが1996年で、その翌年の97年にネット通販の「楽天市場」がスタートし、続いて「Amazon.jp」が2000年に日本でのサービスを開始しています。 「IT革命」という言葉が流行語大賞になったのはその年のことです。「革命」が起きてからもうそろそろ四半世紀が経つわけです。 当時の楽天の狙いは「地方の小さな商店でも、コンピューターに強くなくても、誰でも簡単に店を開けるようにしたいというコンセプト」(楽天グループのHPより)だったそうで、これは購入する側にも同じことが言えます。
つまり「コンピューターに強くなくても、誰でも簡単に」モノが買えるのがECサイトなのです。高齢者だからネットなんてわからない、今後も覚える気がない、従って免許の返納は断じてしない。結果として場合によっては周囲に危険が及んでもやむを得ない─。 仮にそう考えているのであれば、自己中心的な人と見られても仕方がないでしょう。 自己と社会は常につながっており、自分が運転をし続けることが世の中にどう関わっているのか、あるいは関わっていく可能性があるのか、それを考えることができるのが社会性というものです。
空海は「自利利他」という言葉で自分と他人のつながりの大切さを説いています。フランスの哲学者オーギュスト・コントは、「愛他主義」の言葉を用いて他者の立場に立つ生き方の大切さを提唱しました。 もちろん、その男性が免許返納を拒否している理由は、実際には「ネットがわからない」とうことだけではないでしょうし、より複雑な心理状態などが絡んでいるとは思います。なにより「自分はまだ運転能力も認知能力も衰えていない」従って「事故なんて起こすはずがない」と頑なに信じているのでしょう。
高齢者の免許返納問題は難しい社会課題ですので、軽々には答えを出せませんが、あくまでICTリテラシーの重要性を考えるうえで、このできごとは1つの象徴的なエピソードであると感じました。 ちなみに、高齢者のデジタル活用に対する支援策としては、総務省がスマホを使った行政手続きなどに関する相談の受け付けを2021年から講習会形式で行っていますし、シニア向けのプログラミング講座なども支援しているようです。ICTに触れる「機会」は様々な形で社会に用意されていますから、周囲にご高齢の方がいれば紹介してあげてみてください。