お受験で下克上 開校わずか6年目の東農大稲花小、慶応幼稚舎しのぐ人気
夏休みには起業の方法も学べる
学童といえば、かつては放課後に友達と遊び、宿題をし、おやつを食べながら親の迎えを待つものだった。だが、東農大稲花小はそれだけではない。 有料プログラムにはなるが、空手にそろばん、サッカー、STEM(科学・技術・工学・数学)教育などを定期的に実施している。夏休みには起業の方法を学べる特別なプログラムも用意する。 子供たちが物事に興味を持つきっかけになるほか、「習い事に通わせなくてもいいくらい、充実したプログラムとして好評だ」と夏秋校長は話す。 また私立小学校に遠方から通う子供は、地元の友達と次第に疎遠になることも多い。放課後に友達と過ごせるアフタースクールは、そんな子供の居場所としても大切な役割を果たす。 ●自分でやり抜く力を引き出す 教育に熱心なパワーファミリーだが、一流大学への進学を目指すような高学歴志向ばかりではない。実際、東農大稲花小は体験型学習を重視しており、受験対策や先取り学習を積極的に行う「進学校というわけではない」(夏秋校長)。 給食の時間には食材について学び、低学年から田植えや稲刈り、生き物の観察などを行う。東農大の付属校であることを生かし、大学教授による授業はもちろん、北海道にある大学キャンパスで宿泊学習をしたりもしている。 さらに普段から宿題はあまり出さず、夏休みの宿題もないという。できないことはできるようになるまで自分でやり抜くなど、様々な「体験」に重きを置いている。夏秋校長は「仕事で活躍している親が多く、学歴がすべてではないとの実感が親自身にあるのではないか」と話す。 人口減少により、全国の小学校の数は減少傾向だ。03年度は2万3633校だったが、23年度は1万8980校に減っている。そんな中でも私立小学校の数は増加傾向にあり、03年度の179校から23年度は244校に増えている。パワーファミリーをはじめ、子供の教育への支出を惜しまない家庭が多い表れだ。 中でも東農大稲花小のような大学の付属校はエスカレーター式で進学しやすいため、「その後の受験への負担が軽減され、子供が遊びや勉強に集中しやすくなる」(夏秋校長)と人気が高い。共働きで何度も子供の受験をサポートする余裕がない親にとって、“お受験”の重要性はますます高まりそうだ。
藤原 明穂