「第2ステージ」に入ったISによるテロ 矛先は出身国に
日本はISに攻撃されるのか?
日本の本土がISに狙われたことは今まで一度もありません。しかし、シリアでは日本人ジャーナリストらがISの戦闘員にナイフで殺害されたことは記憶に新しいことですし、2016年7月にもバングラデシュの首都ダッカで日本人のJAICA関係者が7人も殺されています。彼らのウェブマガジン「ダービク」では、日本がテロ対策のための国際協力の一環として2億ドルを供出したことを非難し、わが国首相を名指しして、「今までは日本攻撃の優先順位は低かったが、これからはそうはいかない。日本を十字軍の一員とみなし、まずは在外にある日本権益を攻撃する」と具体的な国名を挙げて警告しています。 さらに、2020年には東京でオリンピック・パラリンピックが開催されます。ISは、これから3年かけて我が国を攻撃する準備を進めるのでしょうか? その可能性は十分にあります。テロリストを何人か日本に送り込んでくるというよりも、日本に住み、テロリストと分からないような人をSNSなどでリクルートしようとするかもしれません。テロリストに利するインフラがない日本では、大人数のテロ実行部隊が乗り込んできても、かえって周囲の目を引き、動きにくいと思われるからです。 リオ五輪前には、ISにSNSで取り込まれ、ISに忠誠を誓い、テロ細胞を構築したとされるブラジル人が10人逮捕されました。大会開始のわずか2週間前のことでした。この事実を直視すれば、日本も決して安閑としてはいられないでしょう。
-------------------------------- ■安部川元伸(あべかわ・もとのぶ) 神奈川県出身。75年上智大学卒業後、76年に公安調査庁に入庁。本庁勤務時代は、主に国際渉外業務と国際テロを担当し、9.11米国同時多発テロ、北海道洞爺湖サミットの情報収集・分析業務で陣頭指揮を執った。07年から国際調査企画官、公安調査管理官、調査第二部第二課長、東北公安調査局長を歴任し、13年3月定年退職。16年から日本大学教授。著書「国際テロリズム101問」(立花書房)、同改訂、同第二版、「国際テロリズムハンドブック」(立花書房)、「国際テロリズム その戦術と実態から抑止まで」(原書房)