「ママ、体を大事にして」45歳で売春婦になった女性…”親子”で合法風俗で働く「仕方ない事情」
アメリカはまだまだ「平等」じゃない
――今、楽しいですか。幸福ですか? と、筆者は質問した。 間髪を入れずに彼女は答えた。 「ええ。安全な職場ですから、リラックスして働けます」 そうだ。Ranchビジネスは合法だ。塵一つ落ちていない床、行き届いた清掃が行われているフロア、ピカピカに磨かれたトイレ、腹が減れば直ぐに補える食堂、体を鍛えるジム、ジャクジー、洗濯機、乾燥機、映画を鑑賞できる部屋など、娼婦全員が仕事に没頭できる。 彼女たちはプロとして体を売り、その対価を得る。Ranch側も、宿で働く女性がストレスを感じることがないように最善の注意を払い、客が落とす金額の50パーセントを手にする。環境を整えるのは当然なのだ。 ローラリーは自分が費やした4カ月を、次のように述べた。 「Ranchは、男性と女性が交流してスパークする場所です。様々な文化で育った人と出会うことで、大きな学びがあります。私は5月以降、15名のクライアントを掴みました。ありがたいことに、リピーターになってくださった方もいます」 生い立ちが起因となって苦労したローラリーは、アメリカ合衆国の未来に何を望むのか。それを最後のクエスチョンとした。 「女性の人権が守られる世の中になってほしい。私も、祖母も、母もホワイトの男性が作るルールに従わねばならなかった。そうした社会で、生涯賃金、人生のメリットなんかが決められてしまう。女性が自立できる世の中になることを願っています」 取材の礼を告げると、ローラリーは握手を求めてきた。この細い腕で馬の世話をしたのかと、驚かされる。彼女はこれから何年、Ranchで働くのだろうか。渡された名刺の写真は本人よりも若干若く、実際の彼女以上に溌剌としているかに見えた。 【つづきを読む】『売春をはじめた娘の葛藤…観光でラスベガスを訪れ働くことを決意した「壮絶な人生」』では、ローラリーの娘・ライリーがこの売春宿で働くことになった経緯について書く。
林 壮一(ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属)