映画監督・黒沢清×[Alexandros]川上洋平 映画館で鳴り響く“音の怖さ”に言及
◆これまでやっていないことに挑戦したい
川上:現在公開中の「Cloud クラウド」、そして今年出た2作品を含めて、黒沢監督はどんどん新しい作品を生み出しています。これからはどんな作品作りにチャレンジしていきたいですか? 黒沢:この歳になってもまだ声をかけていただけるのは本当に嬉しいことですので、何でもやりたいです。今年、たまたまですけど「蛇の道」「Chime」「Cloud クラウド」とどれもバタバタと人が死ぬ映画でした。そういう映画が続いたので、次は誰も死なないような映画も久々に撮ってみたいです(笑)。 次に何をやるのかとよく聞かれるんですけど、いつも「これまでにやっていないものをやりたいです」と答えています。 川上:そうなんですね。 黒沢:音楽でもそうなのかな。作る人って2パターンいるそうですね。1つは、ある年齢になると自分のテーマやスタイルが決まって、あるものを繰り返し、掘り下げて、深いものにしていく方。 もう1つは多方面にいろいろなことをやっていく方で、僕は後者みたいですね。1つのことに決められないんです。 川上:僕は「Cloud クラウド」を観て、黒沢監督の新しい一面が見えたなと思ったんです。ファンとして次の作品も楽しみです。
◆「CURE」の当初のタイトルは「伝道師」
川上:「Cloud クラウド」ってタイトルからして怖いですよね。いろんな意味合いがあると思いますが、気味が悪いものを感じました。 黒沢:いわゆる「雲」を意味する言葉ですけど、コンピューター用語としても使いますし、いろんなニュアンスが含まれると思います。うがっていない簡単なタイトルにしたつもりです。 川上:たしか、最初は仮タイトルだったんですよね? 黒沢:そうなんですよ。僕があまり深く考えず、コンピューター用語としてあるなと思って「クラウド」と付けていたんです。 川上:カタカナだったんですね! 黒沢:それで「英語表記にします」とプロデューサーが言ってきたから、いいですよと。だけど調べたら、クラウドファンディングの「crowd(群衆を意味する英語)」とコンピューター用語の「cloud」は綴りも意味も違うんですよね。 最初は不特定多数の意味も含んでいたんですけど、結局「cloud」にしたんです。なので、海外の方から「なんで雲なんですか?」と聞かれそうで今から怖いです(笑)。 川上:いやいや、すごくいいタイトルだと思いますよ! 毎回黒沢さんのタイトルってすごくカッコいいじゃないですか。 黒沢:ちなみに、「CURE」を考えたのは僕じゃないんですよ。 川上:そうなんですか!? 黒沢:最初は「伝道師」というタイトルだったんですけど、かなり宗教的なニュアンスが出過ぎるので、他のタイトルにしたいと。映画を撮り終わってから、プロデューサーから「CUREはどうですか?」と言われました。 「治療」を意味する言葉で、最初は全然意味がわからなくて抵抗を示したんですけど、「たぶんそのほうが海外も含めて、この映画に合っていると思う」と強く言われたんです。そういうものなんですよね。 川上:そうだったんですね! あの映画のタイトルが「CURE」だからこそ、さらに不気味さが増すと思います。 黒沢:たまたまですけど、Cで始まるタイトルが多いですね。 川上:「Cloud クラウド」も、雲というふわっとしたものを映画のタイトルにしたことで、さらに不気味さが増したと思います。みなさんもぜひ、劇場でご覧いただければと思います!
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