「終活」という言葉の誕生は2009年。それ以前に『遺言ノート』や葬儀の多様化も。『婦人公論』誌上に見る女性の「終活」事情
創刊以来、《女性の生き方研究》を積み重ねてきた『婦人公論』。この連載では、読者のみなさんへのアンケートを通して、今を生きる女性たちの本音にせまります。人生の最後をどうしたいかと考え、準備を進めていく「終活」。しかしその中身は一言で括れないほど多岐にわたります。みなさんの取り組みのほどを聞いてみました。 今回は本誌『婦人公論』の記事から「終活」への関心度の移り変わりを見ていきます。 【グラフ】終活を始めたいと思っていますか? * * * * * * * ◆90年代から関心事 「終活」という言葉が誕生したのは2009年。初出は、『週刊朝日』の「現代終活事情」と題した連載だそうです。 『婦人公論』誌上に初めて「終活」という言葉が登場したのは、13年8月22日号の記事「話題の『終活セミナー』でエンディングに備えよう」。終末期に不安を抱えるおひとりさまのライターが、さまざまな講座に潜入するルポでした。 「終活」という言葉では表現されないものの、以前から「自分の終末について積極的に考えていく」ことは、読者の大きな関心事だったようです。 1997年6月号には「遺言ノートを書きましょう」という記事があります。前年に『遺言ノート』を上梓したノンフィクション作家・井上治代さんの寄稿。 井上さんは葬送をテーマにしたセミナーに講師として招かれて大層驚いたとか。5時間もの長大な講座に集まったのは約150名。某シティホテルの大広間に詰めかけた聴衆の熱意に講師もタジタジだったそうです。 『遺言ノート』は今で言う「エンディングノート」のこと。90年代に入ってからの葬送ブームで、散骨やジミ葬など葬儀は多様化したものの、実現するのは難しい。 そこで、井上さんは自分の死に方について書き記せる「遺言ノート」を作ることを提案。その考え方は多くの人に受け入れられました。 「終活」ブームに火がつく前に、すでに素地があったのですね。
◆年賀状欠礼の挨拶状に いくら「理想の最期」を思い描いても、死後の手続きを自分で行うことはできません。家族または業者に託す必要が出てきます。前出の井上さんも記事の中でこう述べていました。 「『好きなようにして』と遺族にゲタを預けるより、『これがいい』と言い残してあげたほうが、ずっと『遺された者のため』であり、『思いやり』があると言えそうだ。そして遺族は『本人の希望通りにしてあげられた』という充足感が湧いてくる」と。 最後に、井上さんが記事内で紹介した事例をご紹介します。その女性は姉を亡くした年の年賀状欠礼の挨拶状に、次のように書いたそうです。 「本年3月、82歳の姉Aが死去しましたので、新年のご挨拶をご遠慮申し上げます。私もボチボチ考えておく必要ありと思い、自分の葬儀に関し遺言いたしました。 1.香典は辞退 2.坊主、神主、牧師の世話になるべからず 3.通夜不要 4.最後のお別れという儀式はやるな(責任の持てない死後の顔なんか見られたくない) 5.可能な限り簡素にやれ 以上でございますので、その節はご協力願い申し上げます。それでは、良いお年をお迎えくださいますようお祈り申し上げます」 実にあっぱれです。 次回は「お墓、どうしてますか?」のアンケート回答をご紹介します
「婦人公論」編集部
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