岸谷五朗「主演映画『月はどっちに出ている』が転機に。演劇から入った僕にとって役作りの時間が特に大事。舞台は、僕の俳優人生と並行して一緒に歩いてくれるもの」
◆無限に伸びていく可能性 そして第3の転機は、94年に寺脇康文さんと共に演劇ユニット「地球ゴージャス」を結成したことだという。 ――劇団に10年いて、毎日のように顔を合わせて気心の知れたメンバーで作る芝居のよさを十分教わりましたから、今度は自分のやりたくなったことを実現させたいと思った。 劇団だと作家の書いたものから、所属メンバーに役を割り振っていくんですよね。でも地球ゴージャスは劇団ではなく一回一回の企画ユニットなので、僕と寺脇さんの二人以外の役は、その脚本に最高のキャスティングを日本中、世界中から配役できる。 劇団で作るとある程度まではあっという間に出来上がるけど、プロデュース公演だと寄せ集めなので、なかなかそこまでいかない。でもうまくいったら無限に伸びていく可能性があるような気がしたんです。 それまで違う生き方をしてきた奴らが、丁々発止とやりあって化学反応を起こしていくと無限の可能性が見える。これがプロデュース公演の楽しいところですね。
毎年の暮れに、寺脇さんとチャリティーイベントのAAA(アクト・アゲインスト・エニシング)をなさっていますね。 ――はい、チャリティーコンサートを今年は12月1日、日本武道館で開催します。これもスタートから約30年になりますかね。 今回は、パレスチナ・ガザ地区とウクライナ、そして震災被害を受けた能登地方の子供たちのために寄附します。神様が我々に人を楽しませる才能を授けてくださったのなら、それを苦しんでいる人たちのために使わなきゃ、と。ぜひ武道館にいらしてください。 岸谷さんは初一念を貫いて、素敵な俳優人生を歩んでいますね。やっぱり舞台が身近にありますか? ――そうですね。子供の時に決めた、生涯追い求めていける仕事と思って探した俳優という職業では、舞台はすぐ隣にいて肩を組んでくれてる感じなんです。僕の俳優人生と並行して一緒に歩いてくれるもの。 映像はポンと離れたところにあって、時々招かれてご褒美でやらせてもらってるような。そんな感じがしますね。(笑) 生涯、飽きないものを見つけて、よかったですね。 (撮影=岡本隆史)
岸谷五朗,関容子
【関連記事】
- 【前編はこちら】岸谷五朗「19歳で三宅裕司さんの劇団に入団。夜中のサンドイッチ工場や解体工事、あらゆるアルバイトをしてレッスン費を稼いだ」
- 平田満「つかこうへいさんと出会ってなかったら、俳優になってなかった。最初に出演した『郵便屋さんちょっと』で未来の伴侶にも同時に出会い」
- 麿赤兒「中学で演劇部を設立し一年から部長に。純粋に演劇に惹かれたというよりは、似た境遇の仲間と擬似家族のようにするのが楽しくて」
- 『光る君へ』乙丸役・矢部太郎さんも指摘。一話と最終話、実はある部分でしっかりリンクを…気づいた視聴者「構造として美しい」「望月の夜はつかの間」
- 『光る君へ』はイチかバチかの賭けだった!脚本家・大石静と監督が明かすドラマの誕生秘話、月のシーンに込めた驚きのこだわりとは